ロードショー (映画用語)








映画におけるロードショーとは、2008年現在の日本では「映画の封切り」と同義の用語となっているが、それが定着するに至るまでは、次のような変遷があった。


そもそもロードショーとは、主にアメリカの演劇界で使用された用語であった。既に実績がある劇団ならばともかく、新進気鋭の劇団の場合、いきなりブロードウェイでの上演を行うのはリスクが高く、興行主も手を出そうとしない。そこで、まずは地方を回って上演を行い、そこで評判を得て実績を積み重ね、最終的にブロードウェイでの上演を目指す、という形が取られた。


このような「ブロードウェイよりも前に行う上演」のことが、一般に「ロードショー」と呼ばれるようになった。


ところが、この用語がアメリカの映画界に移入された際、「まずは、都市部で先行して上映を行い、そこでの評判や観客動員を、他の地方での上映規模等を検討する材料とする」という意味に変質し、この「都市部での先行上映」のことが「ロードショー」と呼ばれるようになった。


日本の映画界には、最初は、このアメリカ映画界での定義が移入された。その結果、1980年代前半までは、主に洋画において「最初は東京・大阪を始めとする数都市で先行上映し、その実績を踏まえて、その他の地方での上映を行う」という形が行われていて、この上映のことを「ロードショー」と称していた。


その一方で、1970年代後半から、「大作映画」と呼ばれる映画において、全国の100以上の映画館で同時に公開するという手法[1] が採用されるようになり、そのことを「全国ロードショー」「拡大ロードショー」と称するようになった。


1990年代中盤までには、従来の意味でのロードショーの形を取る映画はほぼ消滅[2]したため、このころに冒頭に記したような意味合いが定着したといえる。


なお、本来の封切日の前週や前々週の土・日や祝日などに限って映画館のスクリーンにかかる映画があるが、これらは劇場公開ではなく上映という扱いで、通常は「先行上映」「先々行上映」と呼ばれている[3]。もともとは普段の上映の最終回が終了したあとの、夜遅くから翌朝にかけて上映が行われたため「先行オールナイト」「先々行オールナイト」と呼ばれた(翌朝まで上映を行わず夜1回のみ上映の館では「先行レイトショー」「先々行レイトショー」と呼んだ)。しかし、2001年6月に行われた『A.I.』の先行オールナイトはそれまでの慣例を破って夜7時に開始され[4]、これ以後、最終回終了後の空き時間のみを利用した上映を封切り前に行う作品が減っていき、「先行オールナイト」「先々行オールナイト」「先行レイトショー」「先々行レイトショー」という言葉の利用が減り、代わりに「先行上映」という言葉が使われるようになった。



脚注




  1. ^ これを最初に採用したのは、1974年公開の「タワーリング・インフェルノ」、または1976年公開の「キングコング」であるという説がある。


  2. ^ ミニシアター系と呼ばれる映画では、最初に東京や大阪などの限られた映画館のみで公開し、その後各地で順次公開していくという形態を取る場合がある。が、これをロードショーと呼ぶことはほとんどない。


  3. ^ 1990年5月12日に日本公開された『ドライビング Miss デイジー』にて先行上映が行われている直営洋画劇場上映作品 1984–1999 有楽町、ロードショー(洋画)劇場上映作品リスト (PDF)” (日本語). 東宝. 2012年5月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年12月1日閲覧。


  4. ^ 駒井尚文 (2001年6月26日). “eiga.com [トップ10速報]” (日本語). eiga.com. 2001年12月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年12月1日閲覧。 “東京週末興行成績 2001年6月23日&24日”








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