Microsoft Windows
開発者 | マイクロソフト |
---|---|
プログラミング言語 | C、C++、アセンブリ言語[1] |
OSの系統 | MS-DOS / 9x Windows NT Windows CE |
ソースモデル | クローズドソース / シェアードソース |
初リリース | Windows 1.0 / 1985年11月20日 (1985-11-20) |
最新安定版リリース | Windows 10
(OS ビルド 17763.134) - 2018年11月13日 (2018-11-13)
(OS ビルド 17134.407) - 2018年11月13日 (2018-11-13)
(OS ビルド 16299.785) - 2018年11月13日 (2018-11-13) [4] |
最新開発版リリース | Windows 10 Insider Preview
バージョン 1809 (OS ビルド 18290.1000) - 2018年11月28日 (2018-11-28)[5] |
使用できる言語 | 多言語 |
アップデート方式 | Windows Update |
パッケージ管理 | PackageManagement[注 1] |
対応プラットフォーム | ARM, IA-32, x64, Itanium |
カーネル種別 | ハイブリッド |
ライセンス | Microsoft EULA |
ウェブサイト | microsoft.com/ja-jp/windows |
Microsoft Windows(マイクロソフト ウィンドウズ)は、マイクロソフトが開発・販売するオペレーティングシステム (OS) の製品群。グラフィカルユーザインタフェース (GUI)を採用している。
目次
1 概略
2 製品展開
3 歴史
3.1 初期のバージョン
3.2 Windows 3.0と3.1
3.3 Windows 95 / 98 / 98SE / Me
3.4 Windows NT系
3.4.1 64ビットオペレーティングシステム
3.5 Windows CE
4 特徴
5 ライセンス
5.1 x86、x64版Windowsのライセンスの種類
5.2 緊急時におけるライセンスによる制限
6 市場占有とそれに付随する問題
6.1 市場シェア
6.2 マイクロソフトによる独占の問題
7 Windowsに関係する資格
8 脚注
9 関連項目
10 外部リンク
概略
1985年11月に "Interface Manager" というコードネームで登場した[6]。初期のバージョンは独立したOSではなく、MS-DOS上で稼動するGUIを実現するアプリケーションでしかなかった[7]。のちに、GUI環境で先行していた1984年登場のMac OSを追い越して世界のパーソナルコンピュータ市場でトップシェアとなり、2009年10月にはインターネット上で使用されているクライアントの市場シェアの約90%を得た[8][9][10]。また、組み込みシステムやスマートフォン、サーバ、スーパーコンピュータでもそれぞれの用途に最適化されたWindows系のOSが用意されているほか、ドリームキャストやXboxにもWindowsベースのOSが使われている。
2018年5月時点の最新安定版は、デスクトップ版はWindows 10 バージョン 1803、サーバ版はWindows Server 2016、モバイル版はWindows 10 Mobile バージョン 1607、エンベデッドシステム版はWindows 10 IoTである。
製品展開
2018/12/23時点で、Windowsは次の製品系統が展開されている。
Windows NT系 - 1993年に登場したWindows NT 3.1を始めとする系統。マイクロカーネルの採用により多様なアーキテクチャのCPUへの移植が容易なことと、高い信頼性が特徴。ただしWindows 10はx86とx64、Windows 10 MobileはARMのみ、Windows Server 2012はx64のみに対応する。
Windows 10 Home / Pro / Enterprise / S - パーソナルコンピュータ用。
Windows 10 Mobile - スマートフォン用で、OS単体では販売されていない。Windows Phone 8.1の後継。
Windows 10 IoT - 組み込みシステム用。Windows CEの後継。
Windows Server 2019 - サーバ用。
Windows HPC Server - スーパーコンピュータに特化。
- 過去の製品
Windows 9x系 - 家庭向けパーソナルコンピュータ用[11]。MS-DOS上で動作するWindows 3.1以前を引き継ぐ系統。Windows XPよりWindows NT系に一本化され、全開発・サポートが終了した。
Windows Mobile - Windows CEをベースにしたモバイル用OS。Windows Phoneの前身。
Windows Phone - スマートフォン用OS。Windows 10 Mobileに引き継がれ、現在は開発を終了している。
Windows CE(または、Windows Embedded Compact) - 組み込みシステム用。Windows 10 IoTに引き継がれた。
歴史
発売年 | バージョン | 製品名 |
---|---|---|
1985年 | 1.01 | Windows 1.01 |
1986年 | 1.03 | Windows 1.03 |
1987年 | 2.03 | Windows 2.03 |
1988年 | 2.1 | Windows 2.1 |
1988年 | 2.0 | Windows/286 2.0 |
1988年 | 2.1 | Windows/386 2.1 |
1990年 | 3.0 | Windows 3.0 |
1992年 | 3.1 | Windows 3.1 |
1992年 | 3.11 | Windows For Workgroups 3.1 |
1994年 | NT 3.1 | Windows NT 3.1 |
1994年 | 3.2 | Windows 3.2 (中国語版のみ) |
1994年 | NT 3.5 | Windows NT 3.5 |
1995年 | NT 3.51 | Windows NT 3.51 |
1995年 | 4.0 | Windows 95 |
1996年 | NT 4.0 | Windows NT 4.0 |
1996年 | CE 1.01 | Windows CE 1.01 |
1997年 | CE 2.0 | Windows CE 2.0 |
1997年 | CE 2.01 | Windows CE 2.01 |
1998年 | CE 2.10 | Windows CE 2.10 |
1998年 | CE 2.11 | Windows CE 2.11 |
1998年 | 4.1 | Windows 98 |
1999年 | CE 2.12 | Windows CE 2.12 |
1999年 | 4.1 | Windows 98 Second Edition |
2000年 | NT 5.0 | Windows 2000 |
2000年 | 4.9 | Windows Millennium Edition |
2000年 | CE 3.0 | Windows CE 3.0 |
2001年 | NT 5.1 | Windows XP |
2002年 | CE 4.1 | Windows CE 4.1 |
2002年 | NT 5.1 | Windows XP TabletPC, Media Center Edition |
2003年 | NT 5.2 | Windows Server 2003 |
2003年 | NT 5.2 | Windows XP 64-bit Edition |
2004年 | CE 5.0 | Windows CE 5.0 |
2005年 | NT 5.2 | Windows XP Professional x64 Edition |
2005年 | NT 5.2 | Windows Server 2003 x64 Editions |
2006年 | NT 5.1 | Windows Fundamentals for Legacy PCs |
2006年 | CE 6.0 | Windows Embedded CE 6.0 |
2007年 | NT 6.0 | Windows Vista |
2007年 | NT 6.0 | Windows Home Server |
2008年 | NT 6.0 | Windows Server 2008 |
2009年 | NT 6.1 | Windows 7 |
2009年 | NT 6.1 | Windows Server 2008 R2 |
2011年 | CE 7.0 | Windows Embedded Compact 7 |
2011年 | NT 6.1 | Windows Home Server 2011 |
2012年 | NT 6.2 | Windows 8 |
2012年 | NT 6.2 | Windows RT |
2012年 | NT 6.2 | Windows Server 2012 |
2012年 | NT 6.2 | Windows Phone 8 |
2013年 | CE 2013 | Windows Embedded Compact 2013 |
2013年 | NT 6.3 | Windows 8.1 |
2013年 | NT 6.3 | Windows RT 8.1 |
2013年 | NT 6.3 | Windows Server 2012 R2 |
2015年 | NT 10.0 | Windows 10 |
2015年 | NT 10.0 | Windows 10 Mobile |
2015年 | NT 10.0 | Windows 10 IoT |
2016年 | NT 10.0 | Windows Server 2016 |
発売年 | 出荷本数 |
---|---|
1987年11月 | 100万本突破 |
1992年2月 | 900万本(業界推定)[12] |
1992年4月 | 1000万本突破 |
1995年 | 1億本突破 |
1997年 | 2億本突破 |
1999年 | 3億2430万本 |
初期のバージョン
Windowsは1981年9月に開始したInterface Managerというプロジェクトから始まる。1983年11月にWindowsが発表されたが、それから2年後の1985年11月までリリースされなかった。
Windows 1.0はMS-DOS上で動くアプリケーションの一種でシェルに過ぎなかった。MS-DOSの扱える640KBのコンベンショナルメモリをさらにWindowsのシステムに占有されたため、実際にアプリケーションを動かすためのフリーメモリがほとんど残らず実用には程遠かった。Windows 1.0は、複数のウィンドウを画面にウィンドウ自体を重ねて表示せずに、タイル状に表示した。ダイアログ ボックスだけは、ウィンドウに重ねて表示できた。
1987年にリリースされたWindows 2.0はウィンドウの重ね合わせが可能となった。MS-DOSから利用出来るメモリ容量を拡張するEMSメモリを利用することによって、一応は640KB以上のメインメモリが利用できるようになり、1.0より大幅に実用性は高まった。
Windows 3.0と3.1
1990年に発売されたWindows 3.0は、操作感の改良やタスク管理、メモリ管理など、各種機能が網羅的に強化された。日本では、当時のDOS/Vの流行とともにその事実上の後継であるWindows 3.1が爆発的に売れるようになった。それまでは各アーキテクチャ毎に実質的に個別のアプリケーションソフトが必要だったが、パソコンのアーキテクチャの相違をWindowsで吸収することにより、一つの操作方法と一つのアプリケーションソフトが複数のアーキテクチャのパソコンで共有できるようになった。アーキテクチャそれぞれの強みは意味をなさなくなり、単純な性能と価格の比較でアーキテクチャの淘汰が行われた。1990年代後半に至ると、PC/AT互換機とその後継アーキテクチャが存続する事実上唯一のアーキテクチャとなった。
各社から発売される非純正のアプリケーションソフトも徐々に増え、不足していたWindowsに追加するネットワーク機能なども他社から供給されるようになってきた。1990年から1995年にかけて、Windows 3.0とWindows 3.1は全世界で1億台、日本国内でも400万台が出荷され、Windowsは事実上の標準の地位を確立した[13]。Windows 3.1ではオプションとしてWin32sが存在し、一部の32ビットアプリケーションが使用可能になった。
Windows 95 / 98 / 98SE / Me
1995年秋にWindows 95が発売され、世界的なヒット商品となった。Windows 95はシステム的にはWindows 3.xの改良版であり、基本的な構造や安定性は大差ない。しかし、MS-DOS部分がバンドルされ、Windows 3.1までのプログラムマネージャとファイルマネージャはWindows エクスプローラーに統合された。また、Windowsのスタートボタンなど新しいGUIや、TCP/IPなどのネットワーク機能を標準装備。Windows32ビットアプリケーションのサブセット(Win32c、「Win32コンパチブル」)が実行可能になり、限定的ではあるがプリエンプティブ・マルチタスクが可能となった。
Windows 95の成功により、競合したMac OSやOS/2とのシェアの差は拡大した。特に日本ではネットワーク標準搭載のWindows for Workgroupsが発売されていなかったこともあり、Windows 95の発売された1995年は、パソコンやインターネットの普及の元年とも言われた。その後のWindowsシリーズではGUIは大きく変更されず、多くの操作においてWindows 95の操作性が基盤となった。
1998年にWindows 95にInternet Explorer 4.0を統合を行ったWindows 98がリリースされた。翌年にWindows 98の小改良を施したWindows 98 Second Edition(Windows 98 SE)がリリースされた。
2000年にWindows Meがリリースされ、最後のWindows 9x系となった。計画ではWindows 9x系はWindows 98 SEを最後としてWindows NT系のWindows 2000に統合する予定だったが、発売直前にWindows 2000への統合を断念し、次期バージョンであるWindows XPまでのつなぎとして急遽開発されたのがWindows Meである。
Windows 9x系のOSは内部的にMS-DOSを大幅に拡張したものに過ぎず、OSコアの部分には16ビットによる処理も多く残されていた。これは過去のソフトウェアとの互換性や処理負荷の軽減といったメリットをもたらしたが、動作は不安定であり、OSのエラー(いわゆるブルースクリーンが出てしまうような現象)が絶えなかった。
Windows NT系
NTは高可用性が要求されるビジネス向けの市場のためにリリースされた。Windows 9xの開発の終了により、9xの役割も要求されるようになった。最初にリリースされたWindows NT3.1から、NT3.5(1994年)、NT3.51(1995年)、NT4.0(1996年)と、ほぼ1年ごとにリリースされた。
2000年にWindows 2000がリリースされ、NTが消費者用としても以前に比べて採用されるようになった。
2001年に消費者向けの用意された初めてのNTカーネル搭載のOSであるWindows XPがリリースされた。2003年にWindows Server 2003がリリースされた。それまでMicrosoftはセキュリティ問題を軽視していたことで社会問題へと発展し、その回答として見た目などは変えずに全面的に作り直した[要出典]Windows XP Service Pack 2を提供することになった。
Windows XP Service Pack 2の開発と、1994年から利用していた内部システムの全面刷新に手間取り、それまで2、3年間隔で発売していたWindowsだったが、Windows XPの発売から5年が経過した2006年にWindows Vistaがリリースされた。2008年にWindows Server 2008がリリースされた。その後もXPは消費者を中心に人気を博し、Windows 10がリリースされた後でも利用者が増えたが、その6ヶ月後、XPのシェアはようやく10に追い抜かれた[14]。
NTのGUIは、同時期にリリースされた消費者向けのWindowsと似たインターフェイスを採用した。NTは用途や要求に対応するエディションが複数あり、Windows XPでは以前に比べて一気に増えた。
64ビットオペレーティングシステム
Windows NT 3.1からNT 4.0まで対応していた、PowerPCやDEC Alpha、MIPS R4000は64ビットプロセッサとしても使用できたが、NTは32ビットプロセッサとして使用した。64ビット用も存在したが、出荷されなかった。
本格的に64ビットに対応したのは、Intel Itaniumからであり、Windows XP 64-Bit EditionとWindows Server 2003 for Itanium-based Systemが出荷された。これは主にサーバと高度な性能のワークステーション向けのリリースであり、それ以外は64ビットプラットフォームはなかった。しかし、AMD x86-64 が発表されると一般ユーザーが容易に64ビットに移行できる基礎環境が整い、OS単体での販売は行われなかったものの2005年にWindows XP Professional x64 EditionとWindows Server 2003 x64 Editionsがリリースされた[15]。x64に対応したことにより、ワークステーションとしてItaniumをサポートしていたWindows XP 64-Bit Editionは一切の対応を終了した。
Windows Vistaではx64に本格的に移行するためにそれまで一部に限られた出荷から、ユーザーのオーダーに応じた64ビットのディスクの送付、パッケージへの32ビット用と64ビット用の同時封入といった対応が始まった。サーバーエディションは32ビット版の提供がWindows Server 2008を最後に終わり、Windows Server 2008 R2からは64ビット版のみ提供されている。一方でクライアントエディションの32ビット用の出荷停止は発表されていない。
Windows CE
Windows CEは主に組み込み用途を中心とした用途で使用されており、モバイル端末やカーナビゲーションシステム、セガ製ゲーム機のドリームキャストで採用されている。
2010年時点では、電子辞書Brainなどにも搭載されている。
特徴
- 互換性
Windowsは各バージョン間で、アプリケーションプログラムや周辺機器の互換性を基本的には保っているが、細部では動作しないものもある。特に、過去の9x系とNT系の間、過去の16ビットAPI (Win16) と32ビットAPI (Win32) の間、2009年時点の32ビット版と64ビット版の間、Windows XPとWindows Vistaの間、Windows 7とWindows 8/8.1の間などである。もっとも、Windows XPからWindows Vistaへの移行は順調に進まず、Windows 7では仮想マシンで古いバージョンとの互換性を確保する「Windows XPモード」が追加された(2014年4月8日(日本時間4月9日)を以ってWindows XPの延長サポート終了と同時にサポート終了)。
- 信頼性
Windowsの信頼性・安定性は、DOSの設計を引きずる3.xや9x系では多数の問題があったが、NT系では設計が刷新され、大幅に改善された。また、Windowsは圧倒的にユーザー数が多く、コンピュータウイルスやハッカー(クラッカー)の標的になりやすいOSである。このため、Windows 9x系やWindows XP以前のNT系の脆弱性は深刻な社会問題となり、Windows XP SP2やWindows Vistaではセキュリティに重点が置かれた改良がなされた。なお「マイクロソフトのOSと、インテルのマイクロプロセッサ」という組み合わせはウィンテルと俗称されることもある。
- セキュリティ
Windowsについては、他のOSに比べセキュリティホールが悪用される確率が高い。この理由として、シェアが大きく初心者からビジネスユーザーまでさまざまなユーザーがいることから、クラッカーの標的にされやすいこと、OS自体にセキュリティホールが出現しやすい構造上の問題があるなどの原因が指摘されている。Windowsパソコンに侵入するコンピュータウイルスを駆除するために作られたアンチウイルスソフトウェアの種類も多く、多くの場合、メーカー製パソコンではプリインストールされている(無料体験版)。また、マイクロソフト自体も無償で利用可能なMicrosoft Security EssentialsやEnhanced Mitigation Experience Toolkitなどを提供している。
2001年の "Nimda" 騒ぎ以降、2003年の "MSBlast" など、コンピュータウイルスやワームの被害は連続して発生しており、最近ではスパイウェアが問題になっている。Windows内の要素では、標準で搭載されているInternet Explorer(ウェブブラウザ)やOutlook Express(電子メールクライアント)にセキュリティホールが発見されることが多い。また、ユーザー数・社員数ともに規模が大きい割りに対応が遅れることが多いマイクロソフト内の体質を原因と挙げる経済学者もいる[誰?]。
また、Windowsにセキュリティホールが多発する理由に、Windows APIの設計の問題がある。Windows APIはオブジェクト指向を取り入れて、カーネル側オブジェクトを保持している構造体やクラスのアドレスをハンドル値とし、ユーザープロセスに渡す。このため、ユーザーAPIから渡されたハンドル値が不正だったり、別のオブジェクトを指すハンドルにすり替えたりしてしまうと、保護されたカーネル空間というセキュリティを突破して、不正なアクセスをカーネル側で実行させることができてしまう。この問題はWindows NT 4.0の時代にあらゆるAPIで存在し得ることが発覚し、カーネル空間以外の場所に存在するオブジェクトを参照しないようセキュリティ修正が加えられた。
しかし、その修正でもオブジェクトのすり替えは可能で、似たオブジェクトを作るAPIを利用してセキュリティを突破できると証明された。Windows XPまでのNT系では、セキュリティ上重要なAPIではオブジェクト自身のアドレスではなく、そのオブジェクトを識別する値をユーザープロセスに渡し、不正なオブジェクトへのすり替えができないように修正されていった。しかしこの修正はパフォーマンスに影響を与えることから、ふだん頻繁に使われるAPIでは行われていない。例えばディスプレイコンテキストにはセキュリティ修飾子がなく、ウィンドウステーションによって一括管理する簡易セキュリティで代用されている。このため、特権の昇格やカーネル内での任意コード実行といったセキュリティホールの報告が散見される。[独自研究?]
Windows Vistaでは、当初Windows APIに替わる新API、WinFXを中心に据えようという目論見がなされていた[16]。これはWindows APIが持つ欠点を解消する最も確実な手段と言える。しかし、この計画はユーザー側の賛同を得られず、マイクロソフトは撤回した。その代わり、Security Development LifecycleプロセスでWindows APIの弱点を洗い出して手当たり次第修正し、さらにWin32kやNTカーネルに組み込まれていたモジュールを切り離し、ユーザ空間で動作するWindowsサービスモジュールにすることでWindows APIの根本的な弱点を封じ込める修正を行った。この改修の成果は、Windows Vista発売以後、Windows Updateで提供された修正モジュールがWindows XPよりも少ないという形で現れている[17]。なお、Windows APIに替わるという計画はなくなったものの、WinFXは.NET Framework 3.0 としてWindows Vistaに搭載されている。
- サービスパック
Windowsに発見されたセキュリティホールなどの不具合に対して、頻繁に修正モジュールがリリースされている。これらの修正モジュールの集成して動作検証したパッケージをService Pack(サービス パック 略称:SP)という形で発行している。最新のWindows 10では、発売体系の変更に伴いService Releaseに変更された。
SPを適用することによってセキュリティの強化、新機能の追加などのメリットを得られる。ただし、システムに若干の改変を加えるために、一部のアプリケーションの動作に支障をきたすなど問題を引き起こすこともある。また、特定のサービスパックのバージョンに依存するソフトウェアも存在する。現にWindows XPにSPを導入したことが原因で、ヤマハ製のサウンドカードが搭載されたパソコンでサウンドが鳴らなくなるトラブルもあった[18]。これらの問題から、特に企業においては適用されないこともあるが、マイクロソフトは強く適用を推奨している。
また、Windows XP SP2には「Microsoft Windows XP Service Pack 2セキュリティ強化機能搭載」という正式名称が付けられている。これには、マイクロソフトはセキュリティに力を入れていなかったという従来の方針を転換し、今後はセキュリティを最重要課題としてユーザーの印象を変えていくという意味合いがある。マイクロソフトは、Service Packが適用されていないバージョンのみを指す場合に「RTM (Release To Manufacturing)」や「Gold」と表記する。
ライセンス
x86、x64版Windowsのライセンスの種類
Windowsのバージョンやエディションなどによっては存在しない製品形態もある。
リテール版(フルインストール版とアップグレード版)- 通常のWindows販売に用いられるもので、パッケージ版とダウンロード版とがあり、その価格がWindowsの通常価格となる。DSP版やOEM版とは違い、32ビット版と64ビット版のインストールディスク(Windows 7、およびWindows8/8.1の各種パッケージ版での場合)、または32ビット版と64ビット版の各種インストールファイルを一つにまとめたUSBメモリ(Windows 10のパッケージ版での場合)が同梱されており、ユーザーはその一方を自由に選択して使うことが可能。
DSP版(フルインストール版)- 販売形態としてはWindowsを組込んだ製品を販売する業者向けのもの。ライセンス上の扱いはOEM版と同等で[19]、実際Windows XP MCE 2005でDSP版が発売されるまで自作PC市場では全てOEM版と呼ばれていた[20][21]。しかし、厳密にはDSP版はダウングレード権が無いという違いがある[22]。販売段階でなんらかの部品の付属品として購入する形態になっており、また付属品の対象にできる部品はいくつかの種類が規定されていて、その部品を組み込んだ状態でのみライセンスが有効となる。対象とした部品を破棄、あるいは破損し使用できなくなった場合、ライセンスも消滅する[23]。
OEM版- いわゆるパソコンメーカーの製品にプリインストールされたもの、パソコン本体から切り離して、別のパソコンで動かすことは禁じられている。この制限のため、OEM版は通常価格よりも大幅に安価で供給され、またその供給価格の操作によって、マイクロソフトからPCメーカーへの圧力がかけられることもあるとされる[要出典]。ただし、パソコンの部品構成の変更についての制限は明言されていないため、マザーボード交換やケース交換を行ったうえでOEM版Windowsを利用し続ける事例は多い(パーツの入れ替えは、場合によってはテセウスの船と同様の矛盾が生じるため、賛否両論がある)。
ボリュームライセンス (VL) 版- 大量導入時など複数本のライセンスを一括購入する販売形態。購入プログラムの形態により、最低購入数および価格が異なる。原則としてインストールディスクは付属せず、ダウンロード形式でマイクロソフト社のサイトよりインストールイメージを入手するか、別途メディアキットを購入する必要がある。"譲渡時にライセンス取得時に取得したものをすべてまとめて譲渡する"という規定があり、バラ売りはライセンス上、明確に禁じられている。購入者に制限はない為、個人でも購入が可能。また、ソフトウェアアシュアランスと呼ばれる、ダウングレードやライセンスモビリティ、期間中のアップグレード保証などに関する権利を追加出来る唯一のライセンス形態であり、それらが必要な利用形態ではこの形態での購入が必要となる。
このほか、MSDNサブスクリプション、TechNetサブスクリプションでもWindowsのライセンスが提供されている。ただし、それぞれソフトウェア開発・検証、Windowsの評価などと利用目的に制限がある。
緊急時におけるライセンスによる制限
過去のWindowsにおいてはメディアやキーとライセンスは不可分であり、調達元が異なるものでの代用が難しかった為、Windowsの調達でもっとも一般的であるOEM版によるプレインストールPCなど、Windows標準のインストールメディアが付属しない調達形態ではリカバリなど一部の機能について使用に大きな制限があった。
この制限については、2017年現在のWindows 10ライセンスでは不可分とされる記述はなくなり、また、ダウングレード権においては任意の調達元のメディアやキーが利用できるなど、徐々に緩められている。
市場占有とそれに付随する問題
市場シェア
Windowsはパーソナルコンピュータ市場では、1990年代後半よりデファクトスタンダードの地位を得た。このため対応するコンピュータ(メーカー)、周辺機器、アプリケーションも多く、またユーザー数、操作方法の情報なども多い。Windowsが普及した背景には、マイクロソフト自身は一部の周辺機器を除いてハードウェアを製造せず多数のハードウェアメーカーへのOEM供給路線を続けたこと、ライバルのMacintoshやOS/2の必要とするハードウェアが当時は高価だったこと、オフィスソフトであるMicrosoft Office(Office自体はMacintoshでも動作する)や専用のマルチメディアAPIであるDirectXで作成されたゲームプログラムが市場に広く受け入れられ、キラーアプリケーションとなったこと、20世紀末期から21世紀にかけてのダウンサイジングの潮流に乗ったこと、ネットワーク機能やPOSIXサブシステムなどの極めて少数のコンポーネントを除き、完全な独自設計となっており、Windows製品以外との互換性や移植性が低く、他のプラットフォームへの移行が非常に困難であることなどが挙げられる。
近年はモバイル端末の進化により若い世代はあまり個人でパーソナルコンピュータを使用しなくなっており[24]、それらを含めたシェアに関しては比較的厳しい状況にある[25]。
マイクロソフトによる独占の問題
Windowsはマイクロソフトによる独自仕様のソフトウェア製品(プロプライエタリ・ソフトウェア)であり、その製品構成や販売手法をめぐり2009年時点でもいくつかの国で独占禁止法訴訟が起きている。独占の影響を回避するため、官公庁などの公的機関でLinuxなどオープンソースソフトウェアのOSの採用の動き[26]や、オープンフォーマットなどWindows専用のオフィスソフトに縛られないファイルフォーマットの採用の動きがあり、またOSの役割を低下させるクラウドコンピューティングなどの動きもある。上記のようなマイクロソフトによる独占状態の影響もあり、フリーソフトウェア財団は「自由なソフトウェア」というテーマを掲げ、たびたび「脱Windowsキャンペーン」を行っている。
OS市場の独占によるマイクロソフトの強靭な企業体力や統一された操作性が功を奏し、従業員教育にかかるコストが低下したことや、同一系統のプラットフォーム間におけるアプリケーションの互換性がある程度確保されていることに加え、サービス水準合意 (SLA) を締結すれば、競合他社より高品質なサポートを受けることが出来るため、金融機関[注 2]などのインフラ系企業などを中心に独占状態による悪影響よりも良い影響のほうが大きいと考える者が多い。前述のメリットを活かし、さまざまな社会インフラの運用にも幅広く利用されているだけでなく、冒頭でも述べた通り、マイクロソフトによるほぼ完全な独自設計であることから他のOSとの互換性や移植性が非常に低く、非常に有用かつ代用が効かないアプリケーションや周辺機器を数多く抱える製品でもあるため、政財界からは電力会社や公共交通機関などのインフラ産業と同等の扱いを受けることも珍しくない。日本を含むいくつかの国や地域では、独占禁止法の適用除外の対象と見做され、政府機関との随意契約を締結するケースすら存在する[27][28][29]。また、日本や韓国など、いくつかの国や地域ではマイクロソフトとクライアントOSおよびウェブブラウザに関するSLA契約を独占的に締結しているだけでなく、Windows APIを用いた専用のクライアントソフトやActiveXコントロールを用いている場合がある関係上、WindowsとInternet Explorerを用いて電子政府サービスに接続することを利用者に対し推奨ないしは義務付けているため、Windowsマシンを持っていないユーザーは、街頭に設置されている専用の端末を用いてサービスを利用しなければならない。
日本においては他社のOSやブラウザからのアクセスが原因で電子政府システムに障害が発生した場合には、民事および刑事上の責任を負う可能性がある[要出典]。日本国内の金融機関も、マイクロソフトとOSやブラウザに関するSLAを独占的に締結している事業者が多く、指定以外のOSやブラウザのバグによる重大事故への対策の観点から、macOS、Linux、スマートフォンなどからサービスを利用する行為を禁じている事例が少なくない。
このような中、さらに問題が発生した。fossBytesに2016年8月6日(米国時間)に掲載された記事「Linux Users Claim That Windows 10 Anniversary Update Deletes Dual-boot Partitions」によるとWindows10がLinux環境を削除する恐れがあり、Linuxユーザーからも独占状態に対する批判が高まっている。
Windowsに関係する資格
- マイクロソフト認定プロフェッショナル
マイクロソフト認定プロフェッショナル (Microsoft Certified Professional, MCP) はシステムエンジニアを対象にした資格制度である。Windowsのネットワーク設計・構築・運用・保守や、Visual Studioを使ったアプリケーションの開発を主眼に据えた試験を行っている。
- マイクロソフト認定アソシエイト
MCPが技術者向けの資格であるのに対し、マイクロソフト認定アソシエイト (Microsoft Certified Associate, MCA) はIT営業職やオペレーター職など、一般的なIT関連職層を対象にした技術認定資格といえる。日本のみでかつて実施されていた資格制度である。
開始当初はMCA Platform(プラットフォーム)、MCA Database(データベース)、MCA Application(アプリケーション)の合計3科目であったが、2004年4月の改定でMCA Security(セキュリティ)の1科目追加された。全科目に合格するとMCA Masterと呼ばれる。2013年12月27日にプロメトリックによる試験配信が終了した。後継としてはマイクロソフトテクノロジーアソシエイト(MTA)がある[30]。
脚注
注釈
^ かつては非公式のパッケージ管理システムであったが、Windows 10よりマイクロソフト公式となりOSに組み込まれた。
^ WindowsやIEのバグに起因するシステムトラブルが原因で取引金額に狂いが生じたり、残高データが滅失するなどの金銭的損害が発生した場合であっても、適切なSLA契約を締結していれば、マイクロソフトの企業体力により納得できる金額の補償を受けられる可能性があるため。
出典
^ “NT Server Training: Architectural Overview. Lesson 2 – Windows NT System Overview.”. Microsoft TechNet. Microsoft. 2010年12月9日閲覧。
^ “Windows 10 release information - current branch, build history”. Windows TechCenter. マイクロソフト. 2018年11月13日閲覧。
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^ MCA・マイクロソフト認定アソシエイト - プロメトリック - ウェイバックマシン(2014年6月26日アーカイブ分)
関連項目
- マイクロソフトの歴史
- マイクロソフトの欧州連合における競争法違反事件
- コンピュータ分野における対立#Windows
外部リンク
- 公式ウェブサイト
- Windows デベロッパー センター
- Windows クライアント
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