二硫化炭素
二硫化炭素 | |
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IUPAC名 二硫化炭素 | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 75-15-0 |
PubChem | 6348 |
EC番号 | 200-843-6 |
国連/北米番号 | |
KEGG | C19033 |
RTECS番号 | FF6650000 |
SMILES
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特性 | |
化学式 | CS2 |
モル質量 | 76.139 g/mol |
外観 | 無色液体(低純度のものは黄色がかっている) |
密度 | 1.261 g/cm3 |
融点 | -110.8 °C, 162 K, -167 °F |
沸点 | 46.3 °C, 319 K, 115 °F |
水への溶解度 | 0.258 g/100 mL (0 °C) 0.239 g/100 mL (10 °C) 0.217 g/100 mL (20 °C)[1] 0.014 g/100 mL (50 °C) |
屈折率 (nD) | 1.6295 |
構造 | |
分子の形 | 直線形 |
双極子モーメント | 0 D |
危険性 | |
安全データシート(外部リンク) | ICSC 0022 |
EU分類 | 強い可燃性 (F) Repr. Cat. 3 有毒 (T) 刺激性 (Xi) |
EU Index | 006-003-00-3 |
NFPA 704 | 4 3 0 |
Rフレーズ | R11, R36/38, R48/23, R62, R63 |
Sフレーズ | (S1/2), S16, S33, S36/37, S45 |
引火点 | -30 ℃ |
発火点 | 90 ℃ |
爆発限界 | 1.3–50 % |
半数致死量 LD50 | 3188 mg/kg |
関連する物質 | |
関連物質 | 二酸化炭素 硫化カルボニル 二セレン化炭素 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
二硫化炭素(にりゅうかたんそ、carbon disulfide)は代表的な炭素の硫化物で、化学式は CS2。無色で揮発性の液体であり、主にセロハンやレーヨンの製造過程で溶剤として利用されているほか、ゴムの加硫促進剤、有機化学原料や浮遊選鉱剤などに用いられている。二硫炭、硫化炭素、硫炭などと略される。劇物。
目次
1 化学的性質
2 製造
3 反応
3.1 燃焼
3.2 塩素化
3.3 求核付加
4 利用
4.1 殺虫剤
4.2 溶剤
4.3 製造原料
5 毒性
6 危険性
7 参考文献
8 関連項目
9 外部サイト
化学的性質
純度が高いものはエーテル様の芳香を持つ無色の液体だが、保存中に分解しやすく一般的には硫化カルボニルのような悪臭を持つ夾雑物が含まれ黄色を呈する。
二酸化炭素と等電子的な分子であるが、二硫化炭素は非常に燃えやすい。また求核剤と反応しやすく、容易に還元されやすい。この反応性の違いは、硫黄の場合原子核のπ電子供与能が酸素より低く、そのため炭素原子が求電子性を示すためと考えられる。
製造
自然界では火山や沼地から微量に放出されるのみである。
工業的には木炭・コークスなど赤熱した炭素に硫黄の蒸気を反応させて製造する。低温で反応させると、一硫化炭素が発生する。
- C +2S⟶CS2{displaystyle {ce {C + 2S -> CS2}}}
天然ガス(メタン)を炭素源とし、シリカやアルミナ触媒を使えば600°Cという低温で製造することができる。
- 2CH4 +S8⟶2CS2 +4H2S{displaystyle {ce {2CH4 + S8 -> 2CS2 + 4H2S}}}
日本国内での生産量は年間35,000トン(2009年)であり、輸送に困難が伴うことから輸出入はそれほど盛んではない。
反応
燃焼
二硫化炭素は燃焼すると、二酸化硫黄と二酸化炭素が発生する。
- CS2 +3O2⟶2SO2 +CO2{displaystyle {ce {CS2 + 3O2 -> 2SO2 + CO2}}}
塩素化
二硫化炭素の塩素化は四塩化炭素を合成するのに使われる。
- CS2 +3Cl2⟶CCl4 +S2Cl2{displaystyle {ce {CS2 + 3Cl2 -> CCl4 + S2Cl2}}}
求核付加
第一級および第二級アミンの付加によりジチオカルバミン酸アンモニウムを生じる。
- 2R2NH +CS2⟶ R2NH2+R2NCS2−{displaystyle {ce {2R2NH +CS2-> R2NH2^{+}R2NCS2^{-}}}}
同様にアルコキシドからはキサントゲン酸塩を生じる。この反応はビスコース、レーヨン、セロファンなどの再生セルロース製造の基本となっている。またヨードメタンと反応させてメチルキサンテートとすることでシュガエフ脱離やバートン・マクコンビー脱酸素化の基質とすることができる。
- RONa +CS2⟶ ROCS2Na{displaystyle {ce {RONa +CS2-> ROCS_{2}Na}}}
硫化ナトリウムの付加によりトリチオ炭酸ナトリウムを生じる。
- Na2S +CS2⟶ Na2CS3{displaystyle {ce {Na2S +CS2-> Na2CS3}}}
利用
殺虫剤
穀物や果実にたいする殺虫剤として、あるいは土壌の病害性昆虫や線虫の殺滅のために使われる。
[2][3]
溶剤
リン、硫黄、セレン、臭素、ヨウ素、脂質、樹脂、ゴムなどの溶剤として用いられる。[4]オクタノール/水分配係数は1.94。
有機化合物を良く溶解してプロトンNMRに検出されないので、重クロロホルムに溶けにくいサンプルの測定を行う際の溶媒に適している。
製造原料
ビスコースレーヨン、セロファン、四塩化炭素の製造に使われる。
毒性
神経系に影響するため、高濃度では致死的である。
環境省によるリスク評価によれば、呼吸による無毒性量は 3.2 mg/m3 、経口摂取による無毒性量は 2.5 mg/kg.day とされている。
蒸気でなく、皮膚からも吸収されるので取り扱いには注意が必要。誤って皮膚から吸収された場合、急性の二硫化炭素中毒症状は、視覚障害、精神の高揚を伴う興奮発作、次いで意識不明、昏睡、呼吸麻痺として現れる。度々、より長時間の吸引による慢性の中毒症状は、頭痛、不眠、記憶・視覚・聴覚障害、神経炎、血管障害として現れる。変異原性については否定的な報告が多いが肯定的な報告もあって明確に判断できない。発がん性は無いと考えられている。体内で代謝されて主に尿から排泄される。
危険性
揮発性が高く、非常に引火しやすい(引火点-30°C、発火点90°C)。比重が水より大きく水に難溶であることを利用し、二硫化炭素の上に注水し揮発を防ぐ水没貯蔵方法が用いられる。引火した場合は大量の水による消火を行う。燃焼により二酸化硫黄を発生するのでそれに対する注意も必要である。
日本における法規制については下記の通り。
化管法:第一種指定化学物質(1-241)
化審法:優先評価化学物質(1-172)
消防法:危険物第四類特殊引火物
毒劇物取締法:劇物
労働安全衛生法:危険物引火性の物、名称等を表示すべき有害物、名称等を通知すべき有害物、第一種有機溶剤
大気汚染防止法:特定物質
海洋汚染防止法:有害液体物質 B 類
高圧ガス保安法:可燃性ガス、毒性ガス
船舶安全法:引火性液体類
航空法:引火性液体
港則法:引火性液体類
参考文献
^ Seidell, Atherton; Linke, William F. (1952). Solubilities of Inorganic and Organic Compounds. Van Nostrand.
^ Greenwood, Norman N.; Earnshaw, Alan. (1997), Chemistry of the Elements (2 ed.), Oxford: Butterworth-Heinemann, ISBN 0080379419
^ British Crop Protection Council (1987). The Pesticide Manual, A World Compendium, 8th Ed.
^ http://www.akzonobel.com/sulfurderivatives/products/carbon_disulfide/
関連項目
- 有機溶剤作業主任者
- 毒物劇物取扱責任者
外部サイト
化学物質ファクトシート2011年版 二硫化炭素(環境省)
化学物質の環境リスク評価 第4巻 二硫化炭素(環境省環境保健部環境リスク評価室)
化学物質の初期リスク評価書 No.10 二硫化炭素(新エネルギー・産業技術総合開発機構)
国際化学物質安全性カード 二硫化炭素 日本語版 - 国立医薬品食品衛生研究所 (英語版)