土壌




土壌(どじょう)とは、地球上の陸地の表面を覆っている生物活動の影響を受けた物質層のことである。一般には(つち)とも呼ばれる。




目次






  • 1 土壌の生成


  • 2 成分


    • 2.1 土性




  • 3 土壌層


  • 4 土壌帯


    • 4.1 成帯土壌


    • 4.2 間帯土壌




  • 5 土壌生物


  • 6 土壌機能


    • 6.1 植物の生産




  • 7 脚注


  • 8 参考文献


  • 9 関連項目


  • 10 外部リンク





土壌の生成


土壌学者のハンス・ジェニーは、1941年に土壌の性質は土壌を供給する地表の地形、気候、動植物相に反映されると提唱し、以下の5つの要素を土壌生成を司る5大要素とした[1]



  1. 母材(岩)

  2. 気候

  3. 有機体

  4. 地形

  5. 時間



成分


土壌は、岩石が風化して生成した粗粒の無機物(一次鉱物)やコロイド状の無機物(粘土鉱物あるいは二次鉱物)、生物の死骸などの粗大有機物、粗大有機物が微生物などの分解者の作用などによって変質して生じる有機物(腐植)などを含む。


土壌の固体成分は粗に充填されているため、土壌は多くの間隙を持つ。土壌中の間隙は、土壌溶液と土壌空気によって満たされている。土壌溶液の主成分は水であり、この水に水溶性の塩基や有機物などが溶解している。土壌空気の主成分は二酸化炭素、窒素および水蒸気であり、酸素濃度は大気と比較して低い。土壌の間隙には、多くの微生物や動物が生息しており、土壌生物と呼ばれる。


土壌を、構成成分である粒子の大きさによって定義する場合には、粒径が2mm未満の粒子のみを土壌と定義し、2mm以上の粒子を礫(レキ)や粗大有機物などとして除外する。土壌の粒子は、互いに凝集した団粒構造をとることが多いため、粒子の大きさを測定する際には、土壌を多量の分散媒に懸濁させて団粒構造を破壊する必要がある。



土性


土壌を構成する砂と粘土の割合による分類を土性という。以下のように分類される。



  • 砂土(さど):土壌に含まれる粘土が12.5%未満のもの。

  • 砂壌土(さじょうど):土壌に含まれる粘土が12.5~25%のもの

  • 壌土(じょうど):土壌に含まれる粘土が25~37.5%のもの

  • 埴壌土(しょくじょうど):土壌に含まれる粘土が37.5~50%のもの。

  • 埴土(しょくど):土壌に含まれる粘土が50%を超えるもの


上に記したものほど排水がよいが、保水力・保肥力が弱い。



土壌層





土壌層
*O層
*A層
*B層
*C層


土壌は、その構成成分の供給と消失の様式によって、土壌層が積み重なった形状を示すことが多い。土壌層とは、土壌への物質の供給と消失の様式によって形成される平行な境界を持つ層のことである。


例えば、土壌の表層部に植物遺体などの粗大有機物が集積する場合には、この表層部はO層(Organic層)と呼ばれる。O層の下部には、粗大有機物が分解あるいは溶脱されて生じた黒色の層(A層)が観察されることが多い。また、有機物に由来する黒色化が不十分で、風化が進行した鉱物質の層はB層と呼ばれ、風化が十分に進行していない岩石層(母岩)はC層などと呼ばれる。


土壌層は、土壌を分類するための重要な指標とされている。


なお日本の考古学の分野でも、遺跡を構成する土壌を層序学的に分層した「土層」と言う概念が存在するが、本項のような土壌学的な土壌層とはその定義や認識が大きく異なるものである[2]



土壌帯


土壌は気候や植生の影響で、緯度によって異なる土壌帯を形成している。気候やそれによる植生の影響を強く受けたものを成帯土壌、母岩や地形などの影響を強く受け、局地的に見られるものを間帯土壌と呼ぶ。



成帯土壌


成帯土壌は、主に以下のように分類される。




  • 熱帯のラテライト(ラトソル)

  • 熱帯から温帯にかけての酸化物を多く含んだ紅色土や黄色土

  • 温帯から冷帯にかけての落葉広葉樹を育む褐色森林土

  • 冷帯から寒帯にかけてのポドゾル

  • 寒帯で下層が永久凍土層になっているツンドラ土

  • ほか、プレーリー土や中央ユーラシアの黒土(黒色土、チェルノーゼム)など



間帯土壌


間帯土壌には、地中海沿岸のテラロッサやブラジル高原のテラローシャ、デカン高原のレグール、ほかに泥炭土などがある。元になる岩石が、特殊な成分を含んでいる場合などには、土壌の性質により、異なる植生を生じる場合がある。



土壌生物


土壌中には、多数の生物が住んでいる。その多くは土壌中にのみ生活しているものである。


動物の場合、これを土壌動物という。大きいものではモグラやミミズ等が穴を掘って生活しており、中型~小型のものには落ち葉や土の間に生活する昆虫やダニなど、小さなものでは落ち葉表面の水に生活する原生動物などが含まれる。


微生物も重要である。カビやキノコなどの菌類、細菌類といった土壌微生物もきわめて多数生活している。土壌中の従属栄養性の微生物は、生物遺体や排泄物あるいは有害な有機化合物等を分解して、二酸化炭素や水などに変換し、大気や地下水などへ放出する。土壌には、植物の根と共生して養分を供給する菌根菌や根粒菌などが生息し、植物の生育を支えている一方、動植物の生育を阻害する多くの病原微生物も生息している。


これらの生物は堆積する植物遺体の分解や、土壌の撹拌をすることで、土壌の形成に大いにかかわっている。



土壌機能


広義の土壌は、以下の機能を持っている。以下のうち自然機能については、土壌の環境機能と呼ばれている。




  1. 自然機能


    • 生物の生存空間

    • 自然界の構成要素


    • 地下水の媒体



  2. 利用の機能


    • 天然資源の存在


    • 居住地・保養地の存在


    • 農業・林業用地の存在

    • その他の経済的・公用的利用地の存在



  3. 自然・文化遺産の存在場所



植物の生産


植物生産的見地からみると、土壌は植物の培地の一種といえる。ほとんどの農業では土壌を培地とする。


なお、培地に土壌を用いないものを水耕栽培と呼ぶ。養液栽培の場合では、培地としての土壌の種類はさらに細かく、有機質培地を土壌としこれを用いる場合は養液土耕と呼び、無機質培地を用いる場合は養液栽培と呼ばれる。



脚注





  1. ^ デイビッド・モントゴメリー著、片岡夏実訳『土の文明史』築地書館、2010年。ISBN 9784806713999、pp.23-24.


  2. ^ 文化庁 2010, pp. 94.




参考文献


  • 文化庁 「第Ⅳ章:土層の認識と表土・包含層の発掘・第1節:遺跡における土層の認識」『発掘調査のてびき-集落遺跡発掘編-』 同成社、2010年5月、94頁。ISBN 9784886215253。


関連項目







  • 土壌図

  • 赤土

  • eKo センサネットワーク

  • 農業

  • 国際土壌年

  • 土壌汚染

  • 土壌学



外部リンク



  • 日本土壌肥料学会

  • 日本ペドロジー学会

  • 土壌物理学会

  • 日本土壌微生物学会

  • 日本土壌インベントリー





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