リガーゼ
リガーゼ(ligase)とはEC番号6群に属する酵素であり、ATPなど高エネルギー化合物の加水分解に共役して触媒作用を発現する特徴を持つ[1][2]。英語の発音に従ってライゲースと表記される場合もある[3]。リガーゼは別名としてシンテターゼ(シンセテース[3])と呼ばれる。日本語ではリガーゼを指して合成酵素と呼ぶことがあるが、合成酵素といった場合はEC6群のシンテターゼの他にEC4群のシンターゼを含むので留意が必要である。シンテターゼはATPなどの高エネルギー化合物分解と共役しているのに対して、シンターゼ(シンセース[3])はリアーゼ(ライエース[3])の一種であり高エネルギー化合物分解の共役は不要である。[4]
目次
1 概要
2 シンテターゼ
3 一覧
3.1 EC.6.1.-(炭素-酸素結合を形成するもの)
3.1.1 EC 6.1.1.- (アミノアシル-tRNAおよび関連化合物を生成するリガーゼ)
3.1.2 EC 6.1.2 (酸-アルコールリガーゼ(エステルシンターゼ))
3.2 EC.6.2.-(炭素-硫黄結合を形成するもの)
3.2.1 EC.6.2.1.-(酸-チオールリガーゼ)
3.3 EC.6.3.-(炭素-窒素結合を形成するもの)
3.3.1 EC.6.3.1.-(酸-アンモニア(またはアミン)リガーゼ(アミドシンターゼ))
3.3.2 EC.6.3.2.-(酸-D-アミノ酸リガーゼ(ペプチドシンターゼ))
3.3.3 EC.6.3.3.-(シクロリガーゼ)
3.3.4 EC.6.3.4.-(その他の炭素-窒素リガーゼ)
3.3.5 EC.6.3.5.-(グルタミンがアミド-N-供与体となる炭素-窒素リガーゼ)
3.4 EC.6.4.-(炭素-炭素結合を形成するもの)
3.5 EC.6.5.-(リン酸エステル結合を形成するもの)
3.6 EC.6.6.-(窒素-金属結合を形成するもの)
3.6.1 EC 6.6.1 (錯体を形成するもの)
4 出典
5 関連項目
概要
リガーゼには生合成経路上で重要な酵素が多く、代表的な酵素としては
- 各種アミノアシルtRNAシンテターゼ - ペプチド合成系
アシルコエンザイムAシンテターゼ - 脂肪酸合成系- アスパラギンシンテターゼ、グルタミンシンテターゼ - アミノ酸合成系
などが挙げられる。
リガーゼの基質となる高エネルギー化合物はATPがほとんどであるが、GTPやNADなどもある。リガーゼはこれらの高エネルギー化合物と他の基質とがアデニル化,リン酸化,またはピロリン酸化された活性中間体を経由するとともに、加水分解により発生する自由エネルギー変化を駆動力にして触媒反応が生成側に進行する。
シンテターゼ
リガーゼの常用命名法によりシンテターゼの語尾を持つ酵素が多い。すなわち、化合物XとYとをATP加水分解に共役して結合させる酵素は系統名ではX:Yリガーゼと命名されるが、常用名ではX-Yシンテターゼと命名される[5]。例えばアシルコエンザイムAシンテターゼは脂肪酸〈アシル基〉とコエンザイムAとをATP分解のエネルギーを利用して合成する酵素である。[6]
一覧
EC.6.1.-(炭素-酸素結合を形成するもの)
EC 6.1.1.- (アミノアシル-tRNAおよび関連化合物を生成するリガーゼ)
EC.6.1.1.1 チロシンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.2 トリプトファンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.3 トレオニンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.4 ロイシンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.5 イソロイシンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.6 リシンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.7 アラニンtRNAリガーゼ
- EC 6.1.1.8 欠番 削除
EC.6.1.1.9 バリンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.10 メチオニンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.11 セリンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.12 アスパラギン酸tRNAリガーゼ
EC 6.1.1.13 D-アラニン-ポリ(ホスホリビトール)リガーゼ
EC.6.1.1.14 グリシンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.15 プロリンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.16 システインtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.17 グルタミン酸tRNAリガーゼ
EC.6.1.1.18 グルタミンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.19 アルギニンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.20 フェニルアラニンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.21 ヒスチジンtRNAリガーゼ
EC.6.1.1.22 アスパラギンtRNAリガーゼ
EC 6.1.1.23 アスパラギン酸tRNAAsnリガーゼ
EC 6.1.1.24 グルタミン酸tRNAGlnリガーゼ
EC 6.1.1.25 リシンtRNAPylリガーゼ
EC 6.1.2 (酸-アルコールリガーゼ(エステルシンターゼ))
EC 6.1.2.1 D-アラニン-(R)-乳酸リガーゼ
EC.6.2.-(炭素-硫黄結合を形成するもの)
EC.6.2.1.-(酸-チオールリガーゼ)
EC.6.2.1.1 アセチルCoAシンテターゼ
EC 6.2.1.2 酪酸—CoAリガーゼ
EC.6.2.1.3 アシルCoAシンテターゼ
EC.6.2.1.4 スクニシルCoAシンテターゼ
EC 6.2.1.5 コハク酸CoAリガーゼ (ADP生成)
EC 6.2.1.6 グルタル酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.7 コール酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.8 シュウ酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.9 マレイン酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.10 アシル酸CoAリガーゼ (GDP形成)
EC 6.2.1.11 ビオチンCoAリガーゼ
EC 6.2.1.12 4-クマル酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.13 酢酸CoAリガーゼ (ADP生成)
EC 6.2.1.14 6-カルボキシヘキサン酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.15 アラキドン酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.16 アセト酢酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.17 プロピオン酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.18 クエン酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.19 長鎖脂肪酸—ルシフェリン成分リガーゼ
EC 6.2.1.20 長鎖脂肪酸—アシル輸送タンパク質リガーゼ
- EC 6.2.1.21 欠番 → EC.6.2.1.30
EC 6.2.1.22 クエン酸 (pro-3S)-リシンリガーゼ
EC 6.2.1.23 ジカルボン酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.24 フィタン酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.25 安息香酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.26 o-スクシニル安息香酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.27 4-ヒドロキシ安息香酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.28 3α,7α-ジヒドロキシ-5β-コレスタン酸CoAリガーゼ
- EC.6.2.1.29 欠番 → EC.6.2.1.7
EC 6.2.1.30 フェニル酢酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.31 2-フロ酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.32 アントラニル酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.33 4-クロロ安息香酸CoAリガーゼ
EC 6.2.1.34 trans-フェルロイルCoAシンターゼ
EC.6.3.-(炭素-窒素結合を形成するもの)
EC.6.3.1.-(酸-アンモニア(またはアミン)リガーゼ(アミドシンターゼ))
EC.6.3.1.1 アスパラギンシンテターゼ(アスパラギン酸アンモニアリガーゼ)
EC.6.3.1.2 グルタミンシンテターゼ(グルタミン酸アンモニアリガーゼ)- EC.6.3.1.3 欠番 → EC.6.3.4.13
EC 6.3.1.4 アスパラギン酸-アンモニアリガーゼ (ADP生成)
EC 6.3.1.5 NAD+合成酵素
EC 6.3.1.6 グルタミン酸—エチルアミンリガーゼ
EC 6.3.1.7 4-メチレングルタミン酸—アンモニアリガーゼ
EC 6.3.1.8 グルタチオニルスペルミジン合成酵素
EC 6.3.1.9 トリパノチオン合成酵素
EC 6.3.1.10 アデノシルコバラミンリン酸合成酵素
EC 6.3.1.11 グルタミン酸—プトレシンリガーゼ
EC 6.3.1.12 D-アスパラギン酸リガーゼ
EC.6.3.2.-(酸-D-アミノ酸リガーゼ(ペプチドシンターゼ))
EC 6.3.2.1 パントテン酸—β-アラニンリガーゼ
EC 6.3.2.2 グルタミン酸—システインリガーゼ
EC 6.3.2.3 グルタチオン合成酵素
EC 6.3.2.4 D-アラニン—D-アラニンリガーゼ
EC.6.3.2.5 ホスホパントテノイルシステインシンテターゼ
EC 6.3.2.6 ホスホリボシルアミノイミダゾールコハク酸アミド合成酵素
EC 6.3.2.7 UDP-N-アセチルムラミン酸-L-アラニン-D-グルタミン酸—L-リジンリガーゼ
EC 6.3.2.8 UDP-N-アセチルムラミン酸—L-アラニンリガーゼ
EC 6.3.2.9 UDP-N-アセチルムラミン酸アラニン—D-グルタミン酸リガーゼ
EC 6.3.2.10 UDP-N-アセチルムラミン酸アラニン-トリペプチド—D-アラニン-D-アラニンリガーゼ
EC 6.3.2.11 カルノシン合成酵素
EC 6.3.2.12 ジヒドロ葉酸合成酵素
EC 6.3.2.13 UDP-N-アセチルムラミン酸アラニン-D-グルタミン酸—2,6-ジアミノピメリン酸リガーゼ
EC 6.3.2.14 2,3-ジヒドロキシ安息香酸—セリンリガーゼ
- EC.6.3.2.15 欠番 → EC.6.3.2.10
EC 6.3.2.16 D-アラニン—アラニン-ポリグリセロリン酸リガーゼ
EC 6.3.2.17 テトラヒドロ葉酸合成酵素
EC 6.3.2.18 γ-クルタミンヒスタミン合成酵素
EC 6.3.2.19 ユビキチンタンパク質リガーゼ
EC 6.3.2.20 インドール酢酸—リジン合成酵素
EC 6.3.2.21 ユビキチン—カルモジュリンリガーゼ
EC 6.3.2.22 ジフチン—アンモニアリガーゼ
EC 6.3.2.23 ホモグルタチオン合成酵素
EC 6.3.2.24 チロシンアルギニンリガーゼ
EC 6.3.2.25 チューブリン—チロシンリガーゼ
EC 6.3.2.26 N-(5-アミノ-5-カルボキシペンタン酸)-L-システイン-D-バリン合成酵素
EC 6.3.2.27 アエロバクチン合成酵素
EC 6.3.2.28 L-アミノ酸αリガーゼ
EC.6.3.3.-(シクロリガーゼ)
EC 6.3.3.1 ホスホリボシルホルミルグリシンアミジンシクロリガーゼ
EC 6.3.3.2 5-ホルミルテトラヒドロ葉酸シクロリガーゼ
EC 6.3.3.3 デチオビオチン合成酵素
EC 6.3.3.4 カルボキシエチルアルギニンβ-ラクタム合成酵素
EC.6.3.4.-(その他の炭素-窒素リガーゼ)
- EC 6.3.4.1 欠番 → EC 6.3.5.2に統合
EC 6.3.4.2 CTP合成酵素
EC 6.3.4.3 ギ酸—テトラヒドロ葉酸リガーゼ
EC 6.3.4.4 アデノシンコハク酸合成酵素
EC.6.3.4.5 アルギノコハク酸シンターゼ
EC 6.3.4.6 尿素カルボキシラーゼ
EC 6.3.4.7 リボース-5-リン酸—アンモニアリガーゼ
EC 6.3.4.8 イミダゾ酢酸—ホスホリボシル二リン酸リガーゼ
EC 6.3.4.9 ビオチン—メチルマロン酸CoA-炭酸転位酵素 リガーゼ
EC 6.3.4.10 ビオチン—プロピオン酸CoA-カルボキシラーゼ リガーゼ (ATP-加水分解)
EC 6.3.4.11 ビオチン—メチルクロトン酸CoAカルボキシラーゼ リガーゼ
EC 6.3.4.12 グルタミン酸—メチルアミンリガーゼ
EC 6.3.4.13 ホスホリボシルアミン—グリシンリガーゼ
EC 6.3.4.14 ビオチンカルボキシラーゼ
EC 6.3.4.15 ビオチン—アセチルCoAカルボキシラーゼ リガーゼ
EC.6.3.4.16 カルバモイルリン酸シンターゼ
EC 6.3.4.17 ギ酸—ジヒドロ葉酸リガーゼ
EC 6.3.4.18 5-(カルボキシアミノ)イミダゾールリボヌクレオチド合成酵素
EC.6.3.5.-(グルタミンがアミド-N-供与体となる炭素-窒素リガーゼ)
EC.6.3.5.1 NADシンテターゼ
EC 6.3.5.2 GMPシンターゼ (グルタミン加水分解)
EC 6.3.5.3 ホスホリボシルホルミルグリシンアミジン合成酵素
EC 6.3.5.4 アスパラギン合成酵素 (グルタミン加水分解)
EC 6.3.5.5 カルバミン酸リン酸合成酵素 (グルタミン加水分解)
EC 6.3.5.6 アスパラギン酸tRNA合成酵素 (グルタミン加水分解)
EC 6.3.5.7 グルタミン酸tRNA合成酵素 (グルタミン加水分解)- EC 6.3.5.8 欠番→EC 2.6.1.85
EC 6.3.5.9 ヒドロゲノビリニック酸-a,c-ジアミドシンターゼ(グルタミン加水分解)
EC 6.3.5.10 アデノシンコブリック酸合成酵素 (グルタミン加水分解)
EC.6.4.-(炭素-炭素結合を形成するもの)
EC 6.4.1.1 ピルビン酸カルボキシラーゼ
EC 6.4.1.2 アセチルCoAカルボキシラーゼ
EC 6.4.1.3 プロピオニルCoAカルボキシラーゼ
EC 6.4.1.4 メチルクロトン酸CoAカルボキシラーゼ
EC 6.4.1.5 ゲラノイルCoAカルボキシラーゼ
EC 6.4.1.6 アセトンカルボキシラーゼ
EC 6.4.1.7 2-オキソグルタル酸カルボキシラーゼ
EC.6.5.-(リン酸エステル結合を形成するもの)
EC.6.5.1.1 DNAリガーゼ
EC.6.5.1.2 DNAリガーゼ
EC.6.5.1.3 RNAリガーゼ
EC 6.5.1.4 RNA-3'-リン酸シクラーゼ
EC.6.6.-(窒素-金属結合を形成するもの)
EC 6.6.1 (錯体を形成するもの)
EC 6.6.1.1 マグネシウムキラターゼ
EC 6.6.1.2 コバルトキラターゼ
出典
^ リガーゼ、『世界大百科事典』CD-ROM版、平凡社、1998年
^ リガーゼ、『理化学辞典』、第5版、岩波書店
- ^ abcd文部科学省監修学術用語集の「学術語の訳字通則」に従うとリアーゼ、シンテターゼ、シンターゼが正式となる。投稿雑誌によっては英語読みのカタカナ表記であるライエース、シンセテース、シンセースは推奨されない場合がある
^ 合成酵素、『理化学辞典』、第5版、岩波書店
^ シンテターゼ、『理化学辞典』、第5版、岩波書店
^ 酵素命名法(英語)
関連項目
- 酵素
- EC番号
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