義務投票制

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義務投票制(ぎむとうひょうせい)は、選挙において投票すること(または投票所へ行くこと)を有権者に対して法律上義務付ける制度。義務投票制度または強制投票制(度)ともよばれる。対義語は任意投票制(にんいとうひょうせい)。
目次
1 概要
2 義務投票制を採用している国
3 かつて義務投票制を採用していた国(網羅的でないリスト)
4 主な参考文献
5 関連項目
6 外部リンク
概要
有効な投票をすることを義務付けた場合でも、秘密投票制の下では投ぜられた票が有効なものであるかどうかの特定は困難であり、実際には無効票を投じても罰せられることはない。違反者に対する罰則およびその適用は、国によりまちまちである。罰則の種類は、罰金、入獄、選挙人名簿からの抹消など多様だが、罰則の定めが全くない国もある。また、罰則の適用レベルもまちまちであり、厳格に適用する国もあれば、全く適用しない国もある。したがって、義務投票制が投票率に与える効果も、国によってまちまちである。しかし、罰金のように有意性のある罰則を定めこれを厳格に適用している国においては、投票率が非常に高い傾向にある。
先進国における代表例として挙げられるオーストラリアでは、正当な理由なく投票しなかった有権者に対する罰金は20豪ドル(およそ2000円)であり、選挙管理当局が各選挙後に不投票者に対する調査と罰金支払い要求とを体系的に実施している。不投票者が罰金の支払い要求に応じずに起訴されて裁判で有罪となると、50豪ドル(およそ5000円)以下の罰金が課せられるが、さらに裁判所から裁判費用の負担も要求される。オーストラリアでは、1924年の義務投票制採用以来、投票率は選挙人名簿登録者数の90%程度という高い水準で安定している。
義務投票制を採用している国
態様 |
国名 |
制度の内容 |
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罰則適用の厳格な国 |
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罰則は、罰金・権利の一部制限。罰則適用は、厳格。 |
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罰則は、罰金(500キプロス・ポンド以下)・入獄。罰則適用は、厳格。 |
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罰則は、罰金(原則20豪ドルだが、裁判所で争うと50豪ドル以下+裁判費用も必要)。罰則適用は、厳格。 |
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罰則は、選挙人名簿からの抹消。棄権がやむを得ないものであったことを明示するか、5シンガポール・ドルを支払えば、選挙人名簿再登録可能。罰則適用は、厳格。 |
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シャフハウゼン州のみ。州法により、連邦選挙における投票も法的義務。罰則は、罰金(3スイス・フラン)、適用は厳格。 |
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罰則は、次回の同種選挙の被選挙権剥奪。立候補受付完了後に中央選挙管理委員会で審査を行い、前回の選挙において投票していないことが明らかになると失格の措置が取られる。適用は厳格。 |
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罰則は、事実上無期限の入獄。遠洋漁業に出ている、または投票日当日海外にいる場合は対象外。投票において反対票を投じた場合も同様の措置が取られる可能性がある。適用は極めて厳格。 |
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罰則は、罰金。罰則適用は、厳格。 |
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罰則は、罰金・入獄。罰則適用は、厳格。 |
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罰則は、罰金(初回は5-10ユーロ。二回目以降は10-25ユーロ)・選挙権制限(15年間に4回以上棄権の場合は、10年間選挙資格停止)。罰則適用は、厳格。 |
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罰則は、罰金(99-991ユーロ。初回の棄権から6年以内に再度棄権すると、重い罰金が課せられる。)。ただし、71歳以上の者と投票日に海外にいる者との投票は任意。罰則適用は、厳格(初回の棄権に対しては通常は警告文書が送られるだけだが、棄権が重なると裁判所での判決を受けることになる可能性がある)。 |
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罰則適用が厳格でない(不明な)国 |
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罰則は、罰金(10-20ペソ)・権利の一部制限(3年間公職就任・在職禁止)。罰則適用は、厳格でない。 |
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罰則は、罰金・権利の一部制限。ただし、識字能力のない者および66歳以上の者の投票は任意。罰則適用は、厳格でない。 |
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罰則は、罰金(20エジプト・ポンド)。女性の投票は任意。罰則適用レベルは、不明。 |
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罰則は、例えば入獄(1ヶ月以下)。71歳以上の者・病弱者・投票所から200キロメートル以上離れている者の投票は任意。罰則適用は、厳格でない(現在までのところ、棄権を理由に起訴された者はいない。)。 |
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罰則は、罰金。罰則適用レベルは不明。 |
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罰則は、罰金。罰則適用は、厳格でない。 |
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罰則は、罰金。罰則適用レベルは不明。 |
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罰則は、罰金。罰則適用レベルは不明。 |
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罰則は、罰金。ただし、識字能力のない者および71歳以上の者の投票は任意。罰則適用は、厳格でない。 |
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罰則は、罰金(20ソル)・公共サービスの一部制限。71歳以上の者の投票は任意。罰則適用は、厳格でない。 |
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罰則は、権利の一部制限(選挙後3ヶ月間は、投票済証を持参しないと、銀行に振り込まれた給与を引き出せない。)。罰則適用レベルは、不明。 |
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罰則・適用レベルとも不明。 |
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罰則は、罰金(20スイス・フラン以下)。罰則適用は、厳格でない。 |
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罰則が定められていない国 |
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罰則は、なし。 |
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罰則は、なし。 |
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罰則は、なし。 |
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罰則は、なし。 |
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罰則は、なし。 |
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罰則は、なし。 |
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罰則は、なし。 |
以上は、国政レベルの議会議員選挙における義務投票制だが、そのほか、大統領選挙や国民投票における投票が義務とされている場合もある。また、地方選挙レベルでの義務投票制を、地方自治体が独自に定めている場合がある。オーストラリアにおいて、州レベル・市町村レベル選挙について、州法により義務投票制を定めている場合があるのがその一例である。
かつて義務投票制を採用していた国(網羅的でないリスト)
オーストリア:1992年廃止。1992年の完全廃止以前には、州法により連邦議会議員選挙における投票を義務とすることが可能であった。シュタイアーマルク州・チロル州・ファーアアルクベルク州が、1992年まで義務投票制を採用していた。また、1982年までは、大統領選挙における投票は連邦全体において義務であった。その後は、大統領選挙における投票を義務とするかどうかは、各州法にゆだねられた。2004年の大統領選挙において投票を義務としていたのはチロル州だけであったが、同年中に、チロル州においても義務投票制は廃止された。2010年の大統領選挙においては、投票を義務とする州の不在が見込まれる。
オランダ:1917年義務投票制採用・1970年廃止。
チリ:2011年廃止。
ベネズエラ:1993年廃止。
主な参考文献
- Hirczy de Miño, Wolfgang P. 2000. “Compulsory Voting.” In International Encyclopedia of Elections, ed. Richard Rose. London: Macmillan Reference, 44-47.
- Gratschew, Maria. 2002. “Compulsory Voting.” In Voter Turnout Since 1945: A Global Report, eds. Rafael Lόpez Pintor and Maria Gratschew. Stockholm: International IDEA, 105-10. 簡単な登録手続きだけで、International IDEAのサイトからPDF形式でダウンロード可能。[1] また、該当部分の更新版が、International IDEAのサイトで公開されている。[2]
- Gratschew, Maria. 2004. “Compulsory Voting in Western Europe.” In Voter Turnout in Western Europe since 1945: A Regional Report, eds. Rafael Lόpez Pintor and Maria Gratschew. Stockholm: International IDEA, 25-31. 簡単な登録手続きだけで、International IDEAのサイトからPDF形式でダウンロード可能。[3]
- IPU [Inter-Parliamentary Union]. 2008. PARLINE Database on National Parliaments. [4] 情報の探し方:サイトから、国を選び、議院を選び、「Electoral System」を選び、「Voting System」欄を見る。
- Hughes, Colin A. 1966. “Compulsory Voting.” Politcs (The Journal of the Austrlaian Poltical Studies Association) 1(2): 81-95.
関連項目
- 選挙
- 投票
- 参政権
- 投票率
- 棄権
外部リンク
“Compulsory Voting,” Voter Turnout by the International IDEA (英語)
IPU PARLINE database on national elections (英語) 情報の探し方:サイトから、国を選び、議院を選び、「Electoral System」を選び、「Voting System」欄を見る。
“Suffrage,” CIA The World Factbook (英語)
“LF04 Is voting on the national level voluntary or compulsory?” ACE Electoral Knowledge Network (英語)
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