馬具




馬具(ばぐ)とは、人間がウマを制御するためにウマに装着させる道具のことをいう。




目次






  • 1 馬具


  • 2 競走馬用の馬具


    • 2.1 メンコ


    • 2.2 ブリンカー


    • 2.3 パシファイアー


    • 2.4 チークピース


    • 2.5 シャドーロール


    • 2.6 ブロウバンド


    • 2.7 バンテージ




  • 3 馬具の歴史


    • 3.1 世界の馬具


    • 3.2 日本の馬具




  • 4 その他


  • 5 脚注


  • 6 参考文献


  • 7 関連項目





馬具




  • 鞍(サドル)

  • 鐙(あぶみ)

  • 腹帯

  • 蹄鉄

  • 手綱(たづな)


  • ハミ(馬銜)

  • 頭絡

  • 無口

  • 肢巻

  • 胸懸



競走馬用の馬具


競馬においては、競走馬をレースに集中させたり負傷を防ぐためにさまざまな馬具が用いられる[1]



メンコ




メンコを装着した競走馬


競走馬の頭部につける覆面[1]。英語ではhoodとも言う。本来は周囲の音に対して敏感な競走馬につけて音を聞こえにくくするためのもの(耳を覆う部分を耳覆いという[1])である[1]が、装飾として装着されることもある。耳覆いのないメンコのことを鼻頭という[1]。デザインは勝負服に合わせたり、厩舎オリジナルの物があったり多種多様である。また障害競走に出走する馬のメンコは、障害飛越時の衝撃でメンコがずれて前が見えなくならないように目の部分が大きくなっている。日本では目にする機会の多い馬具であるが、海外における使用頻度はそれほど高くない。


周囲の音が聞き取りづらくなるため、馬によっては却って不安を高めてしまう可能性もある。元JRA騎手の岡部幸雄は現役時代、これを理由にメンコの着用に否定的だった。反面、現役のJRA騎手である武豊はメンコの効果を認める発言をしている。



ブリンカー



競走馬の目を覆う馬具で遮眼革(しゃがんかく)とも呼ぶ[1]。後方の視野を奪い[1]、競走馬の意識を前方へ集中させることが目的。レースで他の馬や地面に映る影を怖がる馬やよそ見をする馬に用いられ[1]、馬の個性によっては片側の目だけを覆う場合もある[1]。ブリンカーつきのメンコもある。なおブリンカーを装着する馬は出馬表にBと表記される[1]。これを装着することによって前走から一変する馬も少なくない。出馬表に表記される馬具は基本的にブリンカーのみである。障害競走では、飛越の際に目測を誤る危険性が高いことから装着を禁じられている。


主にメンコとセットで使用するものである。


初めて装着したレースで最も大きな効果を発揮するといわれ、そのことを表す言葉として英語では「ファーストタイム・ブリンカー」、日本語では「初ブリ」がある[2]



パシファイアー




パシファイアーのついたメンコを装着した競走馬(フジマサチャンプ)


語源は英語の"pacifier"(なだめる人、調停者の意)。ホライゾネットともいう[3]。網目状のブリンカー[3]。レース中に他の馬が蹴って跳ね上がった砂が目に入るのを防ぐためのものであるが、装着すると視野が制限されレースに集中する効果が生まれることもある[3]。パドックなどでは装着していても、レース中に装着する馬はそこまで多くない。



チークピース




赤いチークピーシーズを着用した競走馬(パーフェクトジョイ)


目の外側、頬の位置につけ、横および後方の視覚を奪うための馬具[3]。見える範囲はシャドーロールとほぼ同じ。通常左右2つ付けるため複数形でチークピーシーズ(または「チークピーシズ」)と呼ぶ。オーストラリアンブリンカーサイドバーンズ(もみあげの意)とも呼ばれる。



シャドーロール



競走馬の鼻梁に装着し、下方の視界を遮るために使用する矯正用の馬具。



ブロウバンド


馬の額につけるシャドーロール。上方の視界を遮るために使用する。



バンテージ


包帯状のテープ。肢巻ともいう[3]。競走馬の脚部に巻き、外傷から保護するために用いられる[3]。腱や靭帯を保護するためサポーターやテーピング代わりに装着されることもある[3]



馬具の歴史







世界の馬具



日本の馬具




馬形埴輪(東京国立博物館)


日本列島では古墳時代の4世紀後半から5世紀にかけて家畜化された馬が伝来し、馬具も日本列島へもたらされた。古墳時代には古墳の副葬品として馬骨や馬歯とともに金属製の馬具が出土しており、中には馬具を装着したまま埋葬された馬遺体も見られる。また、埴輪(はにわ)には動物を形象したものが見られ、馬を形象した埴輪馬(馬形埴輪)も存在し、各種の馬具を装着した姿として表現されている。




唐花蒔絵鞍(メトロポリタン美術館蔵)


中世には人が座すために置かれる鞍骨を含め、鐙や腹帯など馬具一式を総称して「鞍」と呼び、同時に狭義として鞍骨のみを指して鞍とも呼んでいた[4]。鞍は使用する馬具の組み合わせによって唐鞍・移鞍・大和鞍・水干鞍・軍陣鞍・六位鞍などに区別されている。貴族の時代には身分・官職によって使用できる馬具やその装飾(料)に規定があり、朝儀用の装飾豊かな唐鞍や移鞍は殿上人の官馬に着けられ、六位以下の官人や一般の武士が使用する地味な装飾馬具を六位鞍と呼んだ。鎌倉時代以降の武士の時代に入ると、実用的な大和鞍や軍陣鞍・水干鞍が主流となり、新たな身分秩序に応じた料の規定が設けられた。



その他




  • 哲学者カントは馬具屋の倅であった。

  • 現在服飾ブランドとして有名なグッチやエルメスの前身は馬具メーカーであった。エルメスは現在でも高級馬具を受注生産している。


  • 日本の早口言葉として「武具馬具武具馬具三武具馬具、合せて武具馬具六武具馬具」というものがある。



脚注


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  1. ^ abcdefghij池田2010、172頁。


  2. ^ 矢作2008、144頁。

  3. ^ abcdefg池田2010、173頁。


  4. ^ 二木謙一『中世武家の作法』 <日本歴史叢書> 吉川弘文館 1999 ISBN 4642066578 pp.30-35.




参考文献



  • 池田和幸 『勝ち馬がわかる競馬の教科書』 池田書店、2010年。ISBN 978-4-262-14465-8。

  • 矢作芳人 『開成調教師 安馬を激走に導く厩舎マネジメント』 白夜書房〈競馬王新書 016〉、2008年。ISBN 978-4-86191-476-8。



関連項目




  • 馬装、バーディング(馬甲・馬鎧)

  • 拍車








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