大国主





























































大国主神


出雲大社にある大国主の銅像




十七世神 第六代

先代
天之冬衣神
次代
鳥鳴海神

神祇
国津神
全名
大国主神
別名
大穴牟遅神、国作大己貴命、八千矛神、葦原醜男、大物主神、宇都志国玉神、大国魂神、伊和大神、所造天下大神、地津主大己貴神、国作大己貴神、幽世大神、幽冥主宰大神、杵築大神 等
別称
大国主大神
別称
正一位
神格
国造りの神、農業神、薬神、禁厭の神

天之冬衣神、素戔鳴尊(『日本書紀』)

刺国若比売
配偶者
須勢理毘売命等

建御名方神、言代主神等
神社
出雲大社等

大国主神(おおくにぬしのかみ)は、『古事記』に登場する日本神話の神である。国津神の代表的な神である(天津神の最高神である天照大御神に対して国津神の最高神とされる)。出雲大社・大神神社の祭神。




目次






  • 1 神話における記述


  • 2 別称


  • 3 妻・子孫


    • 3.1 『出雲国風土記』のみ登場の妻子


      • 3.1.1


      • 3.1.2




    • 3.2 神社社伝にのみ登場の子


    • 3.3 その他




  • 4 信仰


    • 4.1 神仏習合


    • 4.2 大国主を祀る主な神社




  • 5 脚注


  • 6 参考文献


  • 7 関連項目


  • 8 外部リンク





神話における記述




須佐之男命から大国主神までの系図(『古事記』による)。青は男神、赤は女神


『古事記』・『日本書紀』の異伝や『新撰姓氏録』によると、須佐之男命の六世の孫、また『日本書紀』の別の一書には七世の孫などとされている。父は天之冬衣神、母は刺国若比売。また『日本書紀』正伝によると素戔鳴尊の息子。


須佐之男命の娘である須勢理毘売命との婚姻の後にスクナビコナと協力して天下を経営し、禁厭(まじない)、医薬などの道を教え、大物主神を祀ることによって葦原中国の国作りを完成させる。だが、高天原からの天照大御神の使者に国譲りを要請され、対話と武力を交えた交渉の末に幽冥界の主、幽事の主宰者となった。国譲りの際にかつて須佐之男命から賜って建立した「富足る天の御巣の如き」大きな宮殿(出雲大社)を修復してほしいと条件を出したことに天津神が約束したことにより、このときの名を杵築大神ともいう。


大国主神を扱った話として、因幡の白兎の話、根の国訪問の話、沼河比売への妻問いの話が『古事記』に、国作り、国譲り等の神話が『古事記』と『日本書紀』に記載されている(但し、『日本書紀』では「大国主神」という神名ではない)。『出雲国風土記』においても多くの説話に登場し、例えば意宇郡母里郷(現在の島根県安来市)の条には「越八口」を大穴持命が平定し、その帰りに国譲りの宣言をしたという説話がある。
また山陰、四国、近畿、三遠信、北陸、関東など広範囲における地方伝承にも度々登場する。



  • 因幡の白兎


  • 大国主の神話(八十神の迫害・根の国訪問・大国主の妻問い)

  • 大国主の国づくり

  • 葦原中国平定



別称


大国主は多くの別名を持つ。(※名義は新潮社神名釈義から)



  • 大国主神(おおくにぬし の かみ)・大国主大神 - 根国から帰ってからの名。偉大な国の主人の意

  • 大穴牟遅神(おおあなむぢ-)・大穴持命(おおあなもち-)・大己貴命(おおなむち-)・大汝命(おおなむち-『播磨国風土記』での表記)・大名持神(おおなもち-)・国作大己貴命(くにつくりおおなむち-) - 誕生後の名。偉大な鉱穴の貴人の意

  • 八千矛神(やちほこ-) - 沼河比売との歌物語での名。多くの矛の意

  • 葦原醜男・葦原色許男神・葦原志許乎(あしはらしこを) - 根国での侮蔑を込めた呼称。地上の現実の国にいる醜い男の意


  • 大物主神(おおものぬし-)-古事記においては別の神、日本書紀においては国譲り後の別名。偉大な精霊の主

  • 宇都志国玉神(うつしくにたま-)・顕国玉神 - 根国から帰ってからの名。現実の国の神霊の意


  • 大国魂神(おおくにたま-) - 各地の神社で同一視される。偉大な国の神霊の意

  • 伊和大神(いわ の おおかみ)伊和神社主神-『播磨国風土記』での呼称

  • 所造天下大神(あめのしたつくらししおおかみ) - 『出雲国風土記』における尊称。地上の国造った神の意

  • 地津主大己貴神(くにつぬしおおなむち の かみ)・国作大己貴神(くにつくりおおなむちのかみ)- 祝詞『大国神甲子祝詞』での呼称

  • 幽世大神(かくりよ の おおかみ)- 祝詞『幽冥神語』での呼称

  • 幽冥主宰大神 (かくりごとしろしめすおおかみ)

  • 杵築大神(きづき の おおかみ)


このうち、オオナムチについて、記紀神話でスクナヒコナと連携して国土経営を行って著しい功績を残し、2神は多くの伝承に連称して現れる[1]。白鳥庫吉は「オオナ」は「スクナ」(少兄、宿禰)に対する「大兄」と解釈している[1]。また「ムチ」は「貴い神」を表す尊称で、神名に「ムチ」が附く神は大己貴のほかには大日孁貴(オオヒルメムチ、天照大御神の別名)、道主貴(ミチヌシノムチ、宗像三女神の別名)、布波能母遅久奴須奴神、八島牟遅能神などのわずかしか見られない[1]



妻・子孫




大国主の系図(『古事記』による)。青は男神、赤は女神、黄は性別不詳


大国主は色々な女神との間に多くの子供をもうけており、記紀・『先代旧事本紀』・『出雲国風土記』に記載されている他、神社社伝にも名がある。子供の数は『古事記』には180柱、『日本書紀』には181柱と書かれている。



  • 嫡后:須勢理毘売命(すせりびめ の みこと、須勢理姫命、『日本書紀』では須勢理姫神)

    須佐之男命の娘。なお、『出雲国風土記』によれば和加須世理比売命(わかすせりひめ の みこと)が神門郡滑狭郷の妻であるという。


  • 妻:多紀理毘売命(たきりびめ の みこと、『日本書紀』では田心姫命)
    須佐之男命の娘で宗像三女神の長女。宗像の奥都島(おきつしま)に鎮座。


    • 子:阿遅鉏高日子根神(あじすきたかひこね の かみ、『古事記』では他に迦毛大御神、『日本書紀』では味耜高彦根神、『出雲国風土記』では阿遅須枳高日子命)

      天若日子と容姿が酷似する。『出雲国風土記』によれば、神門郡高岸郷・仁多郡三沢郷の子だという。葛城の高鴨神社祭神。


    • 娘:下照比売(したてるひめ の みこと、高比売命、下光比売命、稚国玉、『日本書紀』では下照姫命)

      天若日子の妻。大倉比売神社祭神。




  • 妻:神屋楯比売命(かむやたてひめ の みこと、高降姫神、『日本書紀』では高津姫神)
    出自不明。高津姫神は宗像三女神の次女で、辺都宮(へつみや)に鎮座。


    • 子:事代主神(ことしろぬし の かみ、都味歯八重事代主神)[2]

      鴨都波神社・天高市神社・飛鳥坐神社祭神。賀茂氏・大神氏の祖。


    • 娘:高照光姫大神命(たかでるひめ の おおかみ の みこと)[3]

      御歳神社祭神。




  • 妻:八上比売(やがみひめ、『先代旧事本紀』では稲羽八上姫)

    因幡の白兎の段に登場。

    • 子:木俣神(きのまた の かみ、御井神)[4]
      木俣に刺し挟まれたことからの名。



  • 妻:沼河比売(ぬなかわひめ、こし の ぬながわひめ、『先代旧事本紀』では高志沼河姫、『出雲国風土記』では奴奈宜波比売命)

    高志国における妻問いの相手。『出雲国風土記』によれば高志八口の妻で、間に御穂須須美命が生まれたという。奴奈川神社祭神。同神社社伝によると、建沼河男命(越氏の祖[5])という子がうまれたという。

    • 子:建御名方神(たけみなかた の かみ)[6]

      諏訪氏、守矢氏の祖であるともいう。諏訪大社祭神。



  • 妻:鳥取神

    八島牟遅能神の娘。

    • 子:鳥鳴海神
      この神を含む系譜は十七世神と称される。





『出雲国風土記』のみ登場の妻子







  • 綾戸日女命(あやとひめ の みこと) - 宇賀郷での妻。


  • 真玉著玉之邑日女命(またまつくたまのむらひめ の みこと) - 神門郡朝山郷の妻。


  • 八野若日女命(やのわかひめ の みこと) - 神門郡八野郷の妻。







  • 山代日子命(やましろひこ の みこと) - 意宇郡山代郷


  • 和加布都努志能命(わかふつぬし の みこと) - 秋鹿郡大野郷、出雲郡美談郷


  • 阿陀加夜努志多伎吉比売命(あだかやぬしたききひめ の みこと) - 神門郡多伎郷



神社社伝にのみ登場の子




  • 白比古神(しらひこ の かみ) - 白比古神社[7]


  • 奈鹿曽彦命・奈鹿曽姫命(なかそひこ の みこと・なかそひめ の みこと) - 奈鹿曽彦神社・奈鹿曽姫神社[8]。兄妹神。



その他



  • 賀夜奈流美命[9] - 母神不明


信仰


『古事記』上つ巻、及び『日本書紀』神代紀(下)に拠れば、スクナビコナらと共に「大国主が行った国作りとは、人々に農業や医術を教え、生活や社会を作ること」であったとされる[10]。荒ぶる八十神を平定して日本の国土経営の礎を築いた。また出雲大神には祟り神としての側面があり、転じて「病を封じる神(医療神)」になったという[10][11]。古事記には、出雲大神の祟りで口がきけなかった本牟智和気命(垂仁天皇第一皇子)が、出雲大神に参拝することで口が利けるようになったとの逸話がある[12]


医療神としての信仰の事例を近世挙げると、1883年(明治16年)10月に明治天皇皇后(昭憲皇太后)[13]もしくは大正天皇の生母柳原愛子が病弱だった明宮(のち大正天皇)の健康を祈り[14]、出雲大社より大国主の分霊をとりよせ、明宮が生活していた中山忠能邸の神殿に祀っている[15][16]
大正天皇は皇太子時代の1907年(明治40年)5月27日、東郷平八郎元帥等と共に[17][18]、出雲大社を参拝した[19][20]。先述の「記紀にて人々に医術を教えた事による医療神信仰」に加えて、大正天皇は己卯の年の生まれ(平易に言えば干支は卯年の生まれ)であるので、(大国主の兄弟神たち・八十神に嘘の治療法を教えられて浜辺で泣いていた兎を正しい治療法・蒲の穂の花粉で癒やしたという因幡の白兎の)[10]逸話等から験を担いだものとされる。



神仏習合


「大国」はダイコクとも読めることから同じ音である大黒天(大黒様)と習合していった。[21]



大国主を祀る主な神社


大国主を祀る神社は多い。




  • 出雲大社(島根県出雲市)


  • 大前神社(栃木県真岡市)


  • 大國魂神社(東京都府中市)


  • 気多大社(石川県羽咋市)


  • 気多本宮(石川県七尾市)


  • 小国神社(静岡県周智郡)


  • 日吉大社(西本宮、滋賀県大津市坂本)




  • 砥鹿神社(愛知県豊川市)


  • 出雲大神宮(京都府亀岡市)


  • 愛宕神社 (亀岡市)(京都府亀岡市)

  • 一宮神社 (福知山市)


  • 大国主神社(大阪府大阪市)


  • 道明寺天満宮・元宮土師社(大阪府藤井寺市)


  • 大神神社(奈良県桜井市)


  • 高砂神社(兵庫県高砂市)


  • 飛瀧神社(和歌山県那智勝浦町)


  • 八桙神社(徳島県阿南市)


  • 薬師神社 – 全国各地


ほか、全国の出雲神社で祀られている。また北海道神宮(北海道札幌市)をはじめ北海道内のいくつかの神社では、「開拓三神」として大国魂神・少彦名神と共に祀られている



脚注




  1. ^ abc次田潤『新版祝詞新講』p.506、戎光祥出版、2008年。


  2. ^ 『古事記』、『日本書紀』、『先代旧事本紀』


  3. ^ 『日本書紀』


  4. ^ 『古事記』、『先代旧事本紀』


  5. ^ 『古代豪族系図集覧』。


  6. ^ 『古事記』、『先代旧事本紀』


  7. ^ 石川県神社庁


  8. ^ 石川県神社庁


  9. ^ 諏訪神社略縁起 健御名方命御系圖

  10. ^ abc出雲大社の暗号38-41頁『医学の始祖となった出雲神』


  11. ^ 出雲大社の暗号28-30頁『出雲神は祟る、恐ろしい神』


  12. ^ 出雲大社の暗号41-44頁『出雲神に天皇も敬意を払った』


  13. ^ #大社叢書四コマ4-5(原本3-4頁)『三、皇后陛下(昭憲皇太后)出雲大社へ御祈願』


  14. ^ #大正天皇物語コマ17-19(原本9-12頁)


  15. ^ #大正天皇(原2000)31-32頁『アマテラスではなくオオクニヌシ』


  16. ^ #大社叢書四コマ6-7(原本6-8頁)『四、中山邸内へ出雲大社御分靈奉遷』


  17. ^ #大社叢書四コマ8-12(原本11-19頁)『七、出雲大社へ御参拝』


  18. ^ #皇太子殿下島根県行啓日誌コマ60-62(原本115-119頁)『出雲大社御参拝』


  19. ^ 明治40年5月29日官報第7172号。国立国会図書館デジタルコレクション コマ3『○東宮行啓 皇太子殿下ハ一昨二十七日午前九時今市町御旅館御出門島根縣女子師範學校ヘ行啓續テ杵築町御箸出雲大社御参拝午後同縣立杵紫中學校ヘ行啓同四時三十分御旅館ヘ還御アラセラレタリ』


  20. ^ #大正天皇(原2000)112-114頁『公式の山陰巡啓』


  21. ^ 「大国主命」 - 朝日日本歴史人物事典。朝日新聞出版。




参考文献



  • 次田真幸 『古事記 (上) 全訳注』 講談社、1977年12月8日、初版。ISBN 9784061582071。

  • 坂本太郎・井上光貞・家永三郎・大野晋 『日本書紀〈1〉』 岩波書店、1994年9月16日、初版。ISBN 9784003000410。

  • 関祐二 『出雲大社の暗号』 講談社〈講談社+α文庫〉、2013年7月。ISBN 978-4-06-281525-3。

  • 原武史 『大正天皇 朝日選書663』 朝日新聞社、2000年11月。ISBN 4-02-259763-1。




  • 国立国会図書館デジタルコレクション - 国立国会図書館

    • 藤本充安 『皇太子殿下島根県行啓日誌』 聚文館、1907年8月。


    • 皇国敬神会編 『全国有名神社御写真帖』 皇国敬神会、1922年12月。http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/966854 


    • 出雲大社々務所編、「大正天皇と出雲大社」 『大社叢書 第四』 出雲大社々務所、1922年6月。http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1097939 

    • 水谷次郎 「出雲の大神にお祈りあそばす」『大正天皇物語』 日本書院出版部、1927年2月。



  • 『古代豪族系図集覧』 近藤敏喬、東京堂出版、1993年、7頁。ISBN 4-490-20225-3。



関連項目



  • 大国主の国づくり

  • 大国主の神話

  • 大物主

  • 大黒天

  • シヴァ

  • 出雲族



外部リンク


  • 出雲大社









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