照明
照明(しょうめい、英: lighting)とは、
光で照らして明るくすること。- 光を発して光を利用する技術。
- 人工照明によって物を見やすくする技術。
- (舞台芸術、映画撮影、写真撮影など)照明プランを作り、照明機材の設置や操作を行う職業。「ライティング」と呼ばれることもある。
目次
1 概説
2 照明方式の分類
3 場所・目的と照明
4 照明器具
4.1 器具の種類
4.1.1 日本
4.1.2 近年の動向
4.2 歴史
5 撮影などの照明職
6 ギャラリー
7 照明に関する短編映画
8 注釈
9 関連項目
10 外部リンク
概説
照明は、光や陰や闇を利用して、空間のイメージを演出する、照らされる人のイメージを演出したり強調する、夜間や暗所で文字を読むため、など様々な目的で行われる。
ランプ、アーク灯、白熱電球、蛍光灯、LEDなど、多種多様な照明器具が発する光(人工光)によるものを指す。カーテンやブラインドによって外光を遮ったり、照明器具によって発せられる光の強さや方向を調節することを調光(ちょうこう)という。広義には自然光(太陽光や月光)の利用も含めて照明と呼ぶ。
良い照明というのは、場面ごとにことなるが、おおむね、適切な照度(明るすぎず、暗すぎず)、適度な明るさの対比、適切な色彩(彩度)、見る人の視野に明るすぎる光源が入らないこと、見る人の視野の中に不愉快な反射が無いこと、などの条件が挙げられる。
照明を行う場所によって、屋外照明、屋内照明、施設照明、店舗照明、舞台照明、水中照明などと分類することがある。
また、照明を行う目的によって、作業照明、展示照明、ムード照明、防犯照明、景観照明などと分類することもある。
照明をデザインする職業としては照明デザイナー(ライティングデザイナー、撮影監督)がある。
照明方式の分類
光源と作業面との関係で、次の3つに分類される。
- 直接照明
- 光源からの直接光で作業面を照らすもの。一番効率が良いが、照度が不均一になりやすく、まぶしさを感じて目が疲れやすい場合がある。
- 間接照明
- 光源からの直接光を使用せず、壁面・天井面などで反射させてから作業面を照らすもの。効率は悪くなるが、照度を均一にしやすく、雰囲気のある照明が可能である。
- 半間接照明
- 直接光と反射光を組み合わせて作業面を照らすもの。
また、作業面と室内の他の部分との関係で次の3つに分類される。
- 全般照明
- 室内全体を均一の照度になるように、一定の間隔で照明器具を配置するもの。
- 局部照明
- 作業に必要な部分のみ照明を行うもの。省エネルギーの効果があるが、照度が不均一になるため目が疲れやすくなる。
- 全般局部併用照明
- 全般照明と局部照明を併用するもの。
他に「バックライト」と呼び、透過式のメーターや液晶ディスプレイのように、空間を明るくするのではない使い方もある。
場所・目的と照明
- 家庭用室内照明
日本では高照度の照明が好まれ、(家庭だけでなく、公園の照明や道路照明も照度が過度に上げられる傾向が生まれ、それらの照明の光が夜空に向かって放たれ(光害)、近年の日本では7割の地域で夜間にほとんど星空が見えない、という事態に追い込まれている[1]。
- 浴室用照明
- 湯気にさらされても大丈夫なように防湿設計になっている。
- 庭園照明
- 夜間にも観賞者がいる場合、植栽が美しく見えるように照明を当てる。器具はスポットライトや庭園灯など。器具は防雨設計のものを用いる。
- 店舗照明
- 商品ごとに適した照明(客が好む照明、売上が伸びる照明)があり、たとえば、生鮮食料品店では、肉類、野菜類などの種類ごとに、赤みが美しく強調される照明、緑色が強調される照明などを細やかに使いわける手法がここ数十年で普及した。器具は店舗の空間を演出する意匠や配光になっている。
- 展示照明
博物館や美術館の展示室で行われる照明を展示照明と言う。展示照明では、明るさの均一さ、グレア(まぶしさ)の低減、演色性(本来の色の正しい再現)、紫外線や赤外線の除去による展示品の劣化の防止などが行われる。展示品が光で劣化しやすい場合は、展示室全体の照度を極端に落とし、うす暗くする場合もある。
- 工場内照明
- 工場内の作業が安全に行えることや、作業の効率が上がることが重視される。器具は、高天井やランプ交換がしにくい天井などに取りつけるので、ランプは寿命を重視し、寿命の長い高圧放電灯を使うことが多い。演色性は重視されない事が多い。
- 道路照明
- 車道や歩道を明るくする。自動車には基本的にヘッドライトがついており、まったく照明が無い闇の状態でも一応は走行できるようになっているが、適度の道路照明は事故を減らす。自治体が許容する照明(電気代)の予算もあり、どの程度の密度で設置するかはバランスも考慮して決められる。ランニングコスト重視で、演色性はあまり重視されない。ヨーロッパでは黄色やオレンジ色の光の照明が主流。日本では白色系が主流であるが高速道路やトンネル内ではオレンジ色も多用する。照明器具の意匠は環境にマッチしたものを使うことが多い。ランプは寿命の長い高圧放電灯を使うことが多い。
- 舞台照明
- トップライト、バックライト、フットライト、スポットライトなど様々な照明技術を駆使して、舞台上の俳優が演ずる人物の性格を視覚的に印象づけたり、舞台空間のムードづくりや意味づけ等々を行う。器具としては、スポットライト、ホリゾントライトライト、カラーフィルムを使用した特殊器具などがある。
- スポーツ施設照明
- 施設で行われるスポーツがしやすいように配慮した照明。野球場の場合、グランドのどこに打球が飛んでも守備の人間がボールを見失わないように設置するには深いノウハウがあり、空中を飛ぶボールも複数のライトが照らすように、あらかじめ綿密な照明設計を行っている。設置後、グランド内の各場所での視認性のチェックを行う。ランプは寿命の長い高輝度放電灯(主にメタルハライドランプ)を使うことが多く、演色性もある程度考慮される。競技中まぶしくなりにくいよう設置される。
- 手術室用照明
- 施術者の手、手術道具類が、患者の患部などに影を落とさないように「手術用照明灯」(無影灯)が用いられる。
など
照明器具
器具の種類
- キャンドル
- ランプ
- ダウンライト
- 天井へ埋め込んで真下を照らす照明。天井面から壁面を斜めに照らすウォールウォッシャー型のタイプもある。
- ペンダントライト
- 部屋の天井からぶら下げるタイプの照明。
- ブラケットライト
- 壁面に取り付けるタイプの照明。
- シーリングライト
- 天井面に直接付けるタイプの照明。
- 舞台用照明
スポットライト - 一部分を集中して照らす照明。
ホリゾントライト、フットライトなど詳しくは舞台照明の項を参照。
レーザー - 発振源を高速で動かして、スクリーンやスモーク中にパターンを描く。- 映像照明
- 映像業界で主に使われる照明。
- サーチライト
- 特定の物を追いかけながら集中して照らす照明。
- 懐中電灯
日本
- 灯台(とうだい)
- 室内を照らす照明器具で、支柱の上に皿を乗せ、灯油を満たして紐状の灯心に火をつける。
灯籠(とうろう)- 外部を明るくする為の照明。内部に蝋燭を入れ障子紙で火が消えないように工夫している。蝋燭の光が障子を通して外を照らす。昔の外灯。材質は木又は石
行灯(あんどん)- 灯明の周囲を枠で囲み、障子紙を貼ったもの。主に室内で使用されるが看板として店の軒先に掛けたものもある。
提灯(ちょうちん)- 竹ひごを筒状に組みその周囲に障子紙を張ったもの中に蝋燭が入っている。蝋燭の明かりが障子を通し外を照らす。夜にこれを持ちながら歩くと道中の明かり取りになる。家の前にかけておくと外灯にもなる。また使用しない時は上下から折り畳む事が出来る。周りに障子紙が貼られているので風で火が消えることはほとんどない。また上下に穴が空いて空気が通るため酸素不足で火が消えることもない。昔の懐中電灯で、現在実用として使われることはほとんどない。発展形として龕灯(木などで作られ背後に握りの付いた桶状の胴部を持ち、中の蝋燭立が常に正立する様仕組まれた、云わばサーチライト)がある。
- 国民ソケット
電球を直接取り付けるためのソケット。
など
近年の動向
近年は白熱電球及び蛍光灯より消費電力が少なく、かつ長寿命でランプ交換も不要なLED照明が急速に普及している。こうした事から照明器具メーカー各社は(白熱電球及び蛍光灯を用いる)従来型照明器具の生産を大幅縮小してLED器具への移行を進めており、中でも照明器具国内シェアトップのパナソニックは業界の先陣を切って「蛍光灯及び白熱電球を用いる一般住宅向け従来型照明器具生産は2015年度限りで終了し、今後はLEDへ完全移行する」旨を公式発表した(卓上型の電球及び蛍光灯器具については2011年限りで生産を終了しLEDへの移行完了。なお蛍光ランプ・電球型蛍光ランプ・ミニクリプトン球・特殊用途電球などの一部白熱球については今後も交換用途に絞って生産を継続。2014年3月4日付の朝日新聞及び日本経済新聞経済面記事にて報道)。こうした「脱蛍光灯」の動きは今後国内他社にも広がる可能性がある。なお白熱電球生産は(一部特殊用途を除き)2012年度を以て国内メーカー全社が完全終了した。
また、インターネットの発達により、IoTを活用してスマートフォンやスマートスピーカーで照明の明るさや色を操作することも可能になっている。
歴史
- 石器時代
たき火などで夜行性の肉食獣等の外敵から身を守った。- 中世
かがり火、松明、ろうそくや灯明(行灯など)による照明が主流。提灯(ちょうちん)。- 近代化時代
ランプ(鯨油・石油)、ガス灯などに移行。
1870年代以降
電気が利用できるようになり、白熱電球など電気を利用した光源(電灯)の使用が始まる。
アーク灯:初期に利用されていたが寿命が短く、1880年代以降は使用されなくなった。
蛍光灯:1938年に実用化された。はじめは、高価だったため軍用のみに使用された。1950年代以降は一般家庭でも一部で使用されるようになった。ヨーロッパでは蛍光灯の光は嫌われる傾向があるが、日本人はそれを好み広まった。
1980年代以降- 蛍光灯の他、施設や店舗用では発光効率の高いHIDランプなどが使用されるようになった。
2010年代以降- 新たな照明として、施設や家庭などで白熱電球に比べて環境負荷が少なく発光効率の高い、LED照明が使用されるようになってきている[2]。また、将来的には有機EL照明の普及も予想される。
撮影などの照明職
この節の加筆が望まれています。 (2016年7月) |
ギャラリー
地蔵盆の提灯
流木と馬車の車輪を使った手作り照明
さまざまな照明器具(東急ハンズ三宮店)
照明に関する短編映画
照明に関する短編映画が、1960年代及び1970年代に1本ずつ製作されている。
このうち、1960年代に製作されたのは『光の技術』と題された約18分間の短編映画で、松下電器産業(現・パナソニック)の企画の下、東京シネマ(現・東京シネマ新社)により1961年に製作されている。
当映画作品では、光源となる白熱電球や蛍光灯の製造過程を克明に追うと共に、蝋燭から電球そして蛍光灯に至る光源自体の進化のステップを追いかけ、更に新たな光源を追求すべく研究開発の歩みを進める姿もとらえている。
なお、当映画作品を企画した松下、つまり現在のパナソニックは、去る2012年10月末日を以て白熱電球の製造を終了している[3]。
他方、1970年代に製作されたのは『あかり』と題された約30分間の短編映画で、科学技術庁(現・文部科学省ほか)の企画の下、ヨネ・プロダクションにより1976年に製作されている。
この映画では日本に於ける照明の歴史を辿ることにほぼ終始した内容となっているが、弥生時代に発祥したとされる錐揉み式発火法(木と木の摩擦から火を得る手法)や『古事記』にも記録として残る火打石を使った発火法について実演を交えて紹介したり、飛鳥時代の仏教伝来と共にもたらされた灯籠から始まり室内用灯台、行灯、石油ランプ───というふうに現代に至るまでに進化していった照明具の紹介も実物などを交えて為されたりしている。
以上、照明に関連した2本の短編映画は、現在、何れも科学映像館(NPO法人・科学映像館を支える会)Webサイト内に於いて無料公開されている。
注釈
^ NHK『クローズアップ現代』2016年7月8日放送
^ 2000年代以降、地球温暖化防止の観点から環境負荷の低減が求められるようになり、照明においては白熱電球の使用制限などが各国で取り決められている。そのため白熱電球に変わる照明手法として蛍光灯の他、LED照明が注目を集めている。
^ 『パナソニック、白熱電球の生産を10月31日に前倒しして終了』(2012年7月12日付け)・『ついに白熱電球の生産が終了、パナソニックの白熱電球76年の歴史を振り返る』(2012年12月27日付け)── 何れも『家電Watch』(インプレス)より
関連項目
光源:エネルギー源別光源- ランプ (照明器具)
- 照度
- 輝度 (光学)
- 演色性
- ブラックライト
- バリライト
- ライティングディレクター
- イルミネーション
- 光のページェント
照明技術者 - 建築物環境衛生管理技術者
- 映画照明
- テレビ照明
- 舞台照明
- 光害
- 照明植生
外部リンク
- (社)照明学会
(社)応用物理学会、日本光学会
- 短編映画(科学映像館Webサイトより)
光の技術(1961年)
あかり(1976年)