ニュートン式望遠鏡






光路図


ニュートン式望遠鏡(ニュートンしきぼうえんきょう、Newtonian telescope )は、アイザック・ニュートン[1]により考案された反射望遠鏡の一形式である。




目次






  • 1 概要


  • 2 発明


  • 3 反射望遠鏡の代表的存在


  • 4 ケプラー式望遠鏡との比較


  • 5 注釈


  • 6 出典


  • 7 参考文献





概要


筒の先は何もない開放で、反対側にガラスを磨いて凹面にした鏡(主鏡)がある[2]。凹面鏡は放物面であるが、口径が大きくなく焦点距離が長い場合は球面との差はごくわずかであり、放物面にするのに非常にコストがかかるので、球面鏡を採用している市販品も多い[2]


主鏡で反射され集められた光が焦点を結ぶ少し手前に斜めにした平面の副鏡を置き、光を直角して筒の外に出し、接眼レンズで拡大して目で見る[2]。副鏡は光軸に対して45度傾けてあるため斜鏡とも言い、その向きで真円に見える[3]ような楕円である[2]


主鏡斜鏡ともアルミニウムなどで金属メッキしてある[2]。高級品では熱膨張の少ないパイレックスなど耐熱ガラスを使う場合がある[3]


色収差がない特長を生かすため、一般に色収差の少ない高級な接眼レンズが使われる[2][3]



発明




王立協会所有の模造品


アイザック・ニュートンは色収差の補正が不可能であると考え[4]て屈折望遠鏡に未来はないと判断[4]し、反射望遠鏡の開発に取り組み[4]、ピッチ盤に酸化錫をつけて研磨した[1]凹面主鏡[4]と、傾いた斜鏡[4]の組み合わせによる望遠鏡を発明した。1668年に第一号機を完成、考案はグレゴリー式望遠鏡が先行したが、実物を製作された反射望遠鏡としてはこれが最初である。1671年には改良した第二号機を製作し1672年王立協会の例会に提出し説明をし、1672年3月25日号の会報に掲載され、非常な好成績を収めたためニュートンが会員に推薦される理由となった[4]


ニュートン自身の著作『光学』によれば、鏡は銅と錫の合金に銀を少し混ぜた金属鏡[注釈 1]で、主鏡直径は2インチ(以降in)=約50.8ミリメートル(以降mm)、厚さ約1/3in(約8.5mm)、焦点距離は6.25in(約158.8mm)[4]。A.ケーニヒ『望遠鏡と測距儀』では口径34mm、焦点距離159mm、倍率38倍となっている[注釈 2]が、この食い違いについて吉田正太郎は「鏡径2インチ、焦点距離6.25インチではF3.125ですから、当時の技術では放物面の研磨は不可能にちかい」「よく磨けた部分だけを、直径38mmに絞ったのかもしれません」と推測している[4]


一般にニュートン式の斜鏡は45度であることが多いがこの時には斜鏡の傾きは正確な45度ではなく、またピント調整は蝶ネジで主鏡を動かす点が特徴的である[4]


王立協会が所有している、大きな球関節に取り付けた望遠鏡の写真をよく見かけるが、これは1766年にヒース・アンド・ウィングが製作した模造品であることが1980年頃に判明している[4]。1978年にイギリス1ポンド紙幣の図柄になったのもこの模造品である[4]


ただしこの最初の製品で何を見たという記録は残っていない[1]


1722年になってジョン・ハドリーが口径15cm焦点距離150cmを製作[1]、これが当時使われていた口径15cm、焦点距離40mの空気望遠鏡と同じ性能を持っていると実証された[1]ため、この後反射望遠鏡が非常に発達した[1]。この望遠鏡は現代とほとんど同じ経緯台式架台に搭載されていたが、平面副鏡と接眼レンズが一体として動いて合焦させるという、光学精度の点では感心しない構造である[1]



反射望遠鏡の代表的存在


副鏡が平面であり[2]、カセグレン式望遠鏡のように鏡に穴をあける必要がない[2]ため他の反射望遠鏡との比較では製作や、光軸合わせが容易[5][2]であり、接眼レンズを使用し実視で観測する場合[5]には一番広く使われている形式[5][2]である。


経緯台式架台に載せる場合、接眼レンズは常に水平に覗けるので楽な姿勢で観測できる[5]。赤道儀式架台に載せる場合は接眼レンズの向きが変化するので、その軸の回りに鏡筒を回転させる構造になっていた方が良い[5]


望遠鏡が大型の場合、特に天頂付近を見る場合、覗く位置が高くなり、危険である。


観測する方向と接眼レンズを覗く方向が違うためファインダーは必須である[5]



ケプラー式望遠鏡との比較


屈折望遠鏡の代表的存在とされるケプラー式望遠鏡との比較では大口径の製品を安価に制作でき、口径60mmのケプラー式望遠鏡と同じような価格で100mmのニュートン式望遠鏡が購入できる[2]。口径が同じならば三脚が低く済むため小型になる[2]。天頂付近の観測姿勢が楽[2]


同じ口径ならケプラー式望遠鏡の方が安定して見えるという意見もある[2]。筒の片方が開放なので筒中と外気温に差があると気流が起きて像の見え方が悪くなるため、冬の寒い時は観望1時間ほど前に庭に出して据えておいた方が良い[2]。対物レンズの出来が悪いケプラー式望遠鏡は絞って使えば何とかなるが、主鏡の出来が悪いニュートン式望遠鏡はどうしようもない[2]。天体に対し横向きで観望するため、慣れないと天体を探すのは困難である[2]



注釈





  1. ^ 『天体望遠鏡のすべて'81年版』p.54は「黄銅にヒ素を少し混ぜた合金」とする。


  2. ^ 『天体望遠鏡のすべて'81年版』p.54も「口径34mm、焦点距離159mm、倍率38倍」とする。




出典




  1. ^ abcdefg『天体望遠鏡のすべて'81年版』pp.50-57「歴史的な望遠鏡の光学精度を推理する」。

  2. ^ abcdefghijklmnopq『天体望遠鏡の作り方』pp.9-32「天体望遠鏡を作る楽しさ」。

  3. ^ abc『天体望遠鏡の作り方』pp.101-134「100mm反射型望遠鏡の作り方」。

  4. ^ abcdefghijk『天文アマチュアのための望遠鏡光学・反射編』pp.1-34「反射望遠鏡が宇宙を開拓した」。

  5. ^ abcdef『天文アマチュアのための望遠鏡光学・反射編』pp.53-70「反射望遠鏡の種類」。




参考文献




  • 吉田正太郎『天文アマチュアのための望遠鏡光学・反射編』誠文堂新光社 ISBN 4-416-28813-1

  • 吉持健『天体望遠鏡の作り方』日本放送出版協会

  • 天文と気象別冊『天体望遠鏡のすべて'81年版』地人書館





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