中国大陸
中国大陸(ちゅうごくたいりく、英: Mainland China)は、20世紀後半以降中華人民共和国の実効支配下にあるアジア大陸(ユーラシア大陸東部)の広い陸地を指す。具体的な範囲は場合により異なることがある。
目次
1 範囲
1.1 中国
1.2 台湾
2 類語
3 日本語における旧称
4 脚注
5 関連項目
範囲
中国
基本的に、中華人民共和国による実効支配が直接及んでいる領域を指す。特別行政区である香港・澳門(マカオ)については、植民統治終了後も一国二制度により中央政府のコントロールが直接及んでいないことと、相互に出入国管理にあたる出入境管理が行われていることなどから、一般に「中国大陸」に含めないことが多い。
台湾
中華民国の実効支配地域としての「台湾」(台湾地区)と対置する意味合いから、香港・澳門を中国大陸に含める場合もあるが、中国と同様に含めていない場合もある。中華民国における「中国大陸」は、公式には「台湾・澎湖・金門・馬祖(中華民国自由地区)を除く中華民国の領土」[1] と説明しており、中華民国憲法増修条文にある「大陸地区」の表記と同義語であるとしている。
ただし、中華民国政府が公的に領有権を主張する「中国大陸」には、中華人民共和国の実効支配が及ばないモンゴルなどの地域も含まれるが(詳細は中華民国#地理を参照)、実態としては中華人民共和国の実効支配下にある地域のみを指す場合がほとんどで、1992年に制定された両岸人民関係条例(臺灣地區與大陸地區人民關係條例)の施行細則第三条では「大陸地区」の定義を「中国共産党のコントロール下にある地区(中共控制之地區)」としている。そのため、中華民国政府の行政院大陸委員会は、中華人民共和国の直接統治区域だけでなく、香港・澳門についての事務も管轄している。
類語
特別行政区を除く中華人民共和国の実効支配地域に関しては、「中国大陸」のほかにもいくつかの呼称が用いられる。香港・澳門では「内地」(Inland)も使われることがある。例えば、香港、澳門住民が大陸地区を訪問する際に使用する身分証は「港澳居民来往内地通行証」である。
台湾では、台湾海峡を挟み向かい合うことから「対岸」、中国共産党政権の統治下であることから本来は同党の略称である「中共」が同義語として使われ、台湾独立派には、あえて台湾がそれに含まれないことを強調する政治的意図から「中国」と呼ぶ向きがある。
「内地」は台湾人には歴史的な背景もあり植民地宗主国を思わせる上、中華人民共和国や特別行政区の体制側がよく使うために媚びが感じられ、受け入れられないことがある。「対岸」は台湾でのみ使える相対的で場面を選ぶ用語である。「中共」は、中華人民共和国を認めない含みがあるため、当の中国当局がこの用法を拒否している。「中国」は、香港・澳門を含むと考えられるので多くの場合「中国大陸」と範囲が異なるほか、中国語圏で台湾を含まないことを念頭に使用する(たとえば「中国」と「台湾」を同格に並べる)場合は、中華民国体制・一つの中国論を否定する政治的な意味が強い。このため消去法で、比較的中立である「中国大陸」が選ばれる面がある。
ただし、香港では返還後に大陸部から押し寄せた旅行者や移民への反感により、「大陸」の言葉自体がいささか侮蔑的ニュアンスを含むようになってしまった。「大陸仔」(大陸から来た男性)「大陸妹」(大陸から来た女性)などが完全に侮蔑的表現として定着したほか、「大陸」という言葉自体が形容詞として「マナーの悪い」「汚い」などの意味で用いられるようになったため(例として「道端で立ち小便するなんて、彼はなんて大陸なんだろう」など)、香港政府は「大陸」や「中国大陸」という表現を避け「内地」を好んで用いることが多い(大陸人→内地人、内地同胞など)。これはもともと差別用語でなかった「支那」という言葉が現代の日本語で差別的とされ、「中国」が好んで用いられるのと同じケースである。
日本語における旧称
第二次世界大戦の戦前および戦中には「支那大陸」(しなたいりく)という用語が一般的であったが、第二次世界大戦後には「支那」という用語を避けて、「中国」という用語が奨励されたため、2013年現在では「中国大陸」という用語が一般的である。
脚注
^ 中華民国教育部國語推行委員會編、教育部重編國語辭典 「中國大陸」の項 による。
関連項目
中国本土(チャイナ・プロパー):歴史的に漢民族が多数を占める地域を指す中国に関する地域概念。
台湾地区:中華民国の実効統治区域を指す語。「中華民国自由地区」、「台澎金馬」ともいう。中華民国政府は「中国大陸(大陸地区)」の対義語として用いている。
東・東南・南アジアにおける領有権紛争 | |||
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形状 | 領土 | 実効支配している国 | 領有権を主張している国 |
土地: | アクサイチン | 中華人民共和国 | 中華人民共和国 中華民国1 インド |
白頭山/長白山2 | 北朝鮮 中華人民共和国 | 北朝鮮3 韓国1 中華人民共和国3 中華民国1 | |
ボルショイ・ウスリースキー島/黒瞎子島 | 中華人民共和国3 ロシア3 | 中華人民共和国 ロシア 中華民国1 | |
江心坡(カチン州の一部) | ミャンマー | ミャンマー 中華民国1 | |
カシミール2 | インド パキスタン | インド パキスタン | |
朝鮮半島/韓半島と付属島嶼2 | 韓国 北朝鮮 | 韓国 北朝鮮 | |
中国大陸 | 中華人民共和国 | 中華人民共和国 中華民国1 | |
プレアヴィヒア寺院 | カンボジア | カンボジア タイ | |
北ボルネオ(サバ) | マレーシア | マレーシア フィリピン1 | |
外モンゴル | モンゴル | モンゴル 中華民国1 | |
パミール高原2 | アフガニスタン3 タジキスタン3 中華人民共和国3 | アフガニスタン タジキスタン 中華人民共和国 中華民国1 | |
江東六十四屯および外満州 | ロシア | ロシア 中華民国1 | |
鹿屯島 | ロシア | ロシア 大韓民国1 | |
アルナーチャル・プラデーシュ/蔵南 | インド | インド 中華人民共和国 中華民国1 | |
トゥヴァ/唐努烏梁海 | ロシア | ロシア 中華民国1 | |
カラコラム回廊 | 中華人民共和国 | 中華人民共和国 中華民国1 インド | |
間島 | 中華人民共和国 | 中華人民共和国 韓国1 中華民国1 | |
島・水域: | 尖閣諸島/釣魚台 | 日本 | 日本 中華人民共和国 中華民国 |
金門 | 中華民国 | 中華民国 中華人民共和国 | |
サー・クリーク | インド パキスタン | インド1 パキスタン1 | |
竹島/独島 | 韓国 | 韓国 北朝鮮1 日本 | |
馬祖 | 中華民国 | 中華民国 中華人民共和国 | |
西沙諸島/パラセル諸島 | 中華人民共和国 | 中華人民共和国 中華民国 ベトナム | |
東沙諸島/プラタス諸島 | 中華民国 | 中華民国 中華人民共和国 | |
南沙諸島/スプラトリー諸島2 | 中華人民共和国 中華民国 マレーシア フィリピン ベトナム | 中華人民共和国 中華民国 マレーシア フィリピン ベトナム ブルネイ | |
マックルズフィールド堆及びスカボロー礁/中沙諸島4 | 中華人民共和国 | 中華人民共和国 中華民国 フィリピン | |
蘇岩礁/離於島 | 韓国 | 韓国 北朝鮮1 中華人民共和国5 | |
北方領土/南クリル列島 | ロシア | ロシア 日本 | |
台湾島および澎湖諸島 | 中華民国 | 中華民国 中華人民共和国 | |
フーコック島 | ベトナム | ベトナム カンボジア1 | |
ナトゥナ諸島 | インドネシア | インドネシア 中華人民共和国4 中華民国1 | |
註記: | 1あまり積極的ではない。 2全体の領有権を主張する複数の国によって事実上分割されている。 3両国間では事実上解決済みである。 4中華人民共和国はマックルズフィールド堆及びスカボロー礁を独自に中沙諸島と総称している。 5島自体ではなく、周辺の海域について権利を主張している。 |