ムカデ
















ムカデ

生息年代: 418–0 Ma

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後期シルル紀 - 現世



Centipede.jpg

分類





























:

動物界 Animalia


:

節足動物門 Arthropoda

亜門
:

多足亜門 Myriapoda

上綱
:
ムカデ上綱(後性類) Opisthogoneata


:

ムカデ綱唇脚綱
Chilopoda


学名

Chilopoda
Latreille, 1817
英名

Centipede
Chilopod
下位分類群



  • 背気門亜綱 Notostigmophora[1]

    • ゲジ目 Scutigeromorpha



  • 側気門亜綱 Pleurostigmophora[1]


    • イシムカデ目 Lithobiomorpha


    • ナガズイシムカデ目 Craterostigmomorpha


    • オオムカデ目 Scolopendromorpha


    • ジムカデ目 Geophilomorpha





ムカデ(百足、蜈蜙、蜈蚣、蝍蛆、ムカデ類、英名:Centipede)とは、多足亜門・ムカデ綱唇脚綱Chilopoda)に属する節足動物の総称[1]。オオムカデやゲジなどを含め、脚の数が多く、運動性に富む肉食動物である。3000種以上が記載されており[2]、最古の化石記録はおよそ4億2000万年前の古生代シルル紀後期まで遡る[3]




目次






  • 1 呼称


  • 2 形態


    • 2.1 頭部


    • 2.2 胴部


      • 2.2.1 顎肢


      • 2.2.2 顎肢以降の体節






  • 3 生態


    • 3.1 生息地


    • 3.2 捕食行動


    • 3.3 天敵


    • 3.4 防衛と擬態


    • 3.5 繁殖と発育




  • 4 分類


    • 4.1 下位分類


      • 4.1.1 ゲジ目 Scutigeromorpha


      • 4.1.2 イシムカデ目 Lithobiomorpha


      • 4.1.3 ナガズイシムカデ目 Craterostigmomorpha


      • 4.1.4 オオムカデ目 Scolopendromorpha


      • 4.1.5 ジムカデ目 Geophilomorpha






  • 5 人間の生活との関わり


    • 5.1 咬傷


    • 5.2 産業


    • 5.3 飼育


    • 5.4 モチーフ、象徴




  • 6 ムカデの名が付いた生物


  • 7 脚注


  • 8 関連項目


  • 9 外部リンク





呼称


ムカデ」の漢字転写は「百足」、「蜈蜙」、「蜈蚣」、「蝍蛆」などがある。学名「Chilopoda」はギリシア語の「kheilos」(唇)と「pod」(脚)の合成である[4]。英名「centipede」(センティピード、センチピード)はラテン語の「centi」(百)と「ped」(脚)に由来する。ただしムカデの脚はどの種も奇数対であるため、ちょうど100本(50対)の脚をもつムカデは存在しない。なお、日本語や中国語におけると、ゲジ類は「ゲジ」(蚰蜒ゲジゲジ)という他のムカデ類とは異なった名称で呼ばれ、カテゴリ的に「ムカデ」とは区別される傾向も見られる[5]



形態


ムカデ類の体は縦長く、頭部と奇数対の歩脚が並んだ胴部からなる。胴部の前端は捕食用に特殊化した顎肢がある。体長は微小な4㎜から大型な30㎝まであり、多くが1-10㎝に当たる[2]



頭部





ゲジ類の大顎(Ⅰ)、第1小顎(Ⅱ)、第2小顎(Ⅲ)、および顎肢(Ⅳ)





イシムカデ類の触角(ant)、大顎(1)、第1小顎(2)、第2小顎(3)、および顎肢(4)



頭部は多くが腹背に扁平で、4対の付属肢(関節肢)があり、前に1対の触角と下面に大顎・第1小顎・第2小顎という計3対の口器がある[6][7]。ゲジ類の触角は細長く、無数の環状節に細分されるが、他の群では多くが十数ないし数十節をもち、比較的に太短い。大顎は常に平板状の第1小顎に覆われて目立てない。第2小顎は細短い歩脚様の形をとる[7]


背面は頭板に覆われ、眼の数と構造は分類群によって異なり、ナガズムカデ類は単眼1対・オオムカデ類は単眼最多4対・イシムカデ類は通常は多数の単眼が集約し・ゲジ類は真の複眼を有し[7][8][9]・ジムカデ類は全てが無眼である[2]。一部の群、例えばオオムカデ類とイシムカデ類にも無眼の種類がある[10]



胴部


胴部は縦長く、前は顎肢をもつ1節、続いて脚をもつ奇数個の一連の体節(群によって15-191節)、終端は生殖に関わる2節と尾節からなる。



顎肢





オオムカデ類の顎肢




様々なムカデの顎肢
27、32:ジムカデ類
28、31:イシムカデ類
29:ゲジ類
32:オオムカデ類


頭部の次の胴部第1節には、毒腺を持ち、顎のような形になった捕食用の顎肢(forcipules、maxillipeds)がある。往々にして "毒牙" や "顎" と紹介されてきたが、頭部に由来の顎ではなく、胴部由来の歩脚から特殊化したものであり[6][2]、ムカデにおける最も重要な共有派生形質とされる[11][2]。付け根は腹面を覆う基胸板(coxosternite)で、ゲジ類のは左右2枚に区切れるが、他の群は左右癒合する[11]。残りの部位は牙状で、trochanteroprefemur・後腿節・脛節・跗節・ungulum の5節からなり、毒腺の開け口は尖ったungulum の先端付近にある[11]。ゲジ類以外の群では、跗節とungulum が完全に癒合して頑丈なtarsungulum をなす[7]。オオムカデ類(Cryptops属の一部を除く[12])とジムカデ類は、途中の後腿節と脛節は外側が仕切られて第1節と第4節を会合させ、全てが1対の関節丘(ピボット)を共有する[12]。残りの群では完全な後腿節と脛節をもち、特にゲジ類の顎肢は比較的に細長く、上下に湾曲でき、歩脚に似通う形態を維持している[12][11]。毒腺は通常では顎肢に収納されるが、ジムカデ類の中では毒腺が胴部に備わる例がある[11]。神経毒をもつと考えられるが、その成分と仕組みに関してはほとんどが未解明である[13]。顎肢を備える体節は通常では1枚の独立した背板をもつが、オオムカデ類では直後の第1脚と共に1枚の背板に覆われる[2]



顎肢以降の体節




様々なムカデ類における後端の体節と生殖肢
57、61:イシムカデ類
58、62:ジムカデ類
59、60:ゲジ類
63:オオムカデ類
64:ナガズムカデ類


顎肢に続く体節には、それぞれ1対の脚(歩肢)をもつ節が並んでいる。発育異常の奇形や改形類の初齢幼生を除いて、脚の対の数はどの種も奇数である[2]。脚は基節・転節・前腿節・後腿節・脛節・第1跗節・第2跗節の7節と1本の爪によって構成される[7]。転節と前腿節の接続部は不可動である[14][3]。ゲジ類の場合は非常に細長く、第1と第2跗節が鞭のように無数の節単位に細分される[2][7]。対の数は分類群によって異なり、ゲジ類・イシムカデ類・ナガズムカデ類の成体は15対、オオムカデ類では21ないし23対(Scolopendropsis duplicata は39ないし43対[15][16])、ジムカデ類では数が最多で種によって異なり、少ない種でも27対から47対までを示し、多い種は101対を超し、191対まである[2]。特にジムカデにおいては同種でも数は雌雄で異なり[2]、左右非対称[17]や偶数対の脚をもつ奇形も稀にある[14]:55。最後の1対はやや特殊化した曳航肢(ultimate legs)であり、歩行には用いず、分類群によっては感覚・威嚇・防衛・配偶行動・頭部に擬態・移動中のバランスを調節するなどの役を果たす[18][19][20]。一部の種においては鋏のような構造をもち、捕食に用いられるのではないかと推測される[19]



脚のある体節は全てが腹背で腹板(sternite)と背板(tergite)に覆われ、両側は柔軟な関節膜に包まれて小さな側板がある。腹板はほぼ同規的であるが、背板の構造は分類群によって大きく異なり、ジムカデ類以外のものでは往々にして節ごと背板の形態が異なる。ゲジ類のは8枚に癒合し・イシムカデ類のは第2、4、6、9、11、13枚がかなり幅狭く・ナガズムカデ類のは体節と合致しない21枚に細分され・オオムカデ類のは第1枚が顎肢の節まで覆し・ジムカデ類は全ての背板がほぼ同規的で、分け目に幅狭い背板が占め込んでいる[2][7]。特にゲジ類とジムカデ類以外の群では、第7節以前の偶数番目(2・4・6)と第8節以降の奇数番目(9・11・13…)の背板が狭くなるという共通点をもつ[14]


呼吸用の気門は脚をもつ体節にあり、その数と位置は分類群によって異なる。ゲジ類の気門は背甲の後端中心に並んでおり[21]、本群のみを含んだ「背気門亜綱」の由来となる[2]。他のムカデ類(側気門亜綱)では対になって体節の両側(脚の上側の関節膜)に備わっており、ゲジ類の気門とは別起源であると考えられる[21]。オオムカデ類・ナガズムカデ類・イシムカデ類はほとんどが長い背板をもつ体節(1・3・5・7・8・10およびそれ以降の偶数番目)のみに気門を有するが、ジムカデ類ではほぼ全ての体節に気門をもつ[22]。オオムカデ類においては前述の体制を覆い、ほぼ全ての体節に気門を有するPlutonium zwierleini という例外がある[22]


曳航肢に続いて生殖に関わる2節があり[2]、一部の群はその腹面から対になる生殖肢(gonopod)が見られ、雌雄によって構造が異なる[7]。オオムカデ類の場合、これらの節は退化的で背側からは見られない[14]:63。最後尾は尾節であり、「anal valves」という肛門を覆う1対の板状構造をもつ[7]



生態



生息地


極地を除いて、ムカデ類は世界各地の陸上に分布し、熱帯雨林においては最も多様化している[2]。多くが森林中の落ち葉・朽木・石の裏など湿度の高い場所に住むが、草原・砂漠・洞窟・海岸などに生息する種類もいくつかある[2][23]


小型のもの、特にジムカデ類は土壌動物として生活しているものが多い。また、イシムカデ類における地表にも出るホルストヒトフシムカデと同所的に分布する土壌性の強いダイダイヒトフシムカデを比較すると判るように、地中に棲む傾向の強い種は単眼数が少なかったり、無眼の場合もあり、淡い体色で、体毛が少なく、肢や触角が短い。地中や朽木の生活に特化したジムカデ類は無眼で、黄色や赤、白、緑などの体色を示し、非常に細長い体に短い足を多数持ち、土壌中をミミズのように穿孔する。つつくと尾端を頭部と擬態して後ずさりしたり、とぐろを巻くように体を丸める種が知られている。この類に属するヨコジムカデなど、地下5mほどの餌となる土壌生物の密度が薄い層からも得られることがあり、活発な垂直移動をしていると思われる種もある。オオムカデ類の小型種もほとんどは無眼で、土壌動物である。



捕食行動





ナメクジを捕食するオオムカデ類


ムカデ類は多くが単独生活をする夜行性の肉食動物であり、顎肢を用いて獲物の体に毒を注入する[2][11][12]。全般的には偏食性のないジェネラリストと考えられるが、ヤスデを専門に捕食するヨロイオオムカデというスペシャリストな例も存在する。腐肉を摂ることもあり[24]、人工飼育による観察では飢えた場合は植物組織を摂食する記録もある[25]


オオムカデ類は多くが地表や樹上などを徘徊し、待ち伏せや偶発[2]に遭遇した昆虫などの小動物を捕食する。特に大型種ではカエル・トカゲ・鳥類・ヘビ・ネズミ・飛行中のコウモリなどの小型脊椎動物さえ捕食することが知られている[26][27]。イシムカデ類は、比較的短い体形で軽快に走り回り、小動物を捕らえる。徘徊生活に特化したゲジ類は滑るように素早く走り、鞭状の長い脚を投げ縄のように獲物を纏って捕食する[19][28]:222。飛行をする昆虫も採食し[11]、複数の獲物を持ちながらも移動できる[19]。ジムカデ類は細長い体で地下生活に適しており、土中のミミズなどを捕食する[23]。ナガズムカデ類の食性は明らかになっていないが、飼育下では朽木からシロアリを掘り出して捕食する行動が見られる[29]



天敵





オオムカデ類を捕食するニシブッポウソウ


天敵として鳥類・爬虫類・哺乳類などの脊椎動物、および他の肉食節足動物などがある。ムカデ類を専門に捕食する肉食動物は、Aparallactus capensis というヘビの仲間[30]Stigmatomma pluto(旧Amblyopone pluto)というジムカデ類を好んで捕食するアリの仲間[31]が挙げられる。



防衛と擬態





ヨロイオオムカデおよびその生息地(B)


相手に嚙み付いて自衛する習性をもつが、どのムカデ類も刺激や危険に遭うと反撃よりは逃走をしようとする[13]。一部の種は胴部の後端が頭部に似通う体色と触角らしい曳航肢をもち、これは頭部に擬態するものと考えられる[18]。ヨロイオオムカデはヤスデに擬態し、頑丈な背板をもって動きが遅く、刺激を受けるとヤスデのようにまとまる[32]。イシムカデ類は後端数対の脚を上下に揺らして粘液を分泌し、クモやアリなどの小型捕食者からの攻撃を防ぐ[19]。ゲジ類では触角らしい曳航肢にあるほか、脚を付け根から自切するという防衛手段をもつ。また、オオムカデ類は後端数対の脚を挙げて威嚇することがある[18]



繁殖と発育



繁殖は精包の受け渡しを通じて行い、雌は生殖肢を用いて雄の精包を拾う。雌雄はお互いの後端に向き合うように輪に囲んで、触角で相手の曳航肢に触る配偶行動が知られる[19]。卵生で、ゲジ類とイシムカデ類の幼生は孵化から既に単独生活をするが、ジムカデ類・オオムカデ類・ナガズムカデ類の雌は育児習性をもち、卵と初齢幼生の世話をする[33][34]


幼生の成長様式は分類群によって異なる。ゲジ類・イシムカデ類・ナガズムカデ類の初齢幼生は成体より少数の脚と体節で生まれ(それぞれ4対・6/7/8対・12対[2])、成長するたびに脱皮を通じてその数を増やしていく(増節変態)[2]。この特徴に因んで、これらのムカデ類は「改形類」(Anamorpha)としてまとめられてきた。ゲジ類とイシムカデ類は複数回の脱皮を通じて15対に達するが、ナガズムカデ類は1回だけで15対になる[29]。オオムカデ類とジムカデ類は、孵化から既に成体の同様の脚と体節の数を揃い、「整形類」(Epimorpha)をなす[2]



分類





多足類の仲間、ムカデ(左上)・ヤスデ(右上)・エダヒゲムシ(左下)・コムカデ(右下)










多足亜門











後性類

ムカデ綱



前性類



















ヤスデ綱






エダヒゲムシ綱






コムカデ綱








多足亜門において、ムカデ綱は自ら後性類(Opisthogoneata、ムカデ上綱とも)をなし、残りの多足類は前性類(Progoneata、ヤスデ上綱とも)で、ヤスデ綱・コムカデ綱・エダヒゲムシ綱からなり、ムカデ綱と姉妹群を構成する[3][14]。名の示すように、後性類の生殖孔は胴部の後方に備え、前性類のは胴部の前方に当たる。この系統関係は形態学と分子系統学の両方面の見解に支持される[35]



下位分類












ムカデ綱











背気門亜綱

ゲジ目



側気門亜綱














ナガズイシムカデ目



Amalpighiata














イシムカデ目



整形類














オオムカデ目






ジムカデ目












Amalpighiata仮説に基づいたムカデの内部系統関係

3000種以上のムカデが知られ、ゲジ目(Scutigeromorpha)・イシムカデ目(Lithobiomorpha)・ナガズイシムカデ目(=ナガズムカデ、Craterostigmomorpha)・オオムカデ目(Scolopendromorpha)・ジムカデ目(Geophilomorpha)という5つの群で大まかに分けられる[1]。化石種まで含めば、Devonobius delta 1種のみによって知られるDevonobiomorpha がある[3][36]


かつては発育様式に従い、ゲジ目・イシムカデ目・ナガズイシムカデ目からなる改形亜綱(改形類、Anamorpha、ゲジ亜綱とも)と、オオムカデ目・ジムカデ目からなる整形亜綱(整形類、Epimorpha、ムカデ亜綱とも)の2群としてまとめられる分類体系があった。一方で、気門の構造などの形態学的構造と、ゲジ類における多くの祖先形質とされる特徴に因んで、ゲジ目のみからなる背気門亜綱(Notostigmophora)と、残り全てのムカデ類からなる側気門亜綱(Pleurostigmophora)の2群として区別する分類体系も提唱される[2]。分子系統学的解析では後者の系統関係を支持し、ゲジ目は最初期に分岐した基盤的なムカデ類であることを明らかにした[37][38]


側気門亜綱の内部系統については、イシムカデ目は基盤的で、卵と幼生を育つ習性に基づいてナガズイシムカデ目と整形類がPhylactometriaをなすという系統関係が提唱される[2]。しかし分子系統学的解析では、むしろナガズイシムカデ目が基盤的でイシムカデ目と整形類の類縁関係(Amalpighiataをなす)を支持する結果が出る[37][38]



ゲジ目 Scutigeromorpha





オオゲジ Thereuopoda clunifera(ゲジ目・ゲジ科)



ゲジ類(ゲジ目 Scutigeromorpha、英名:house centipede、cave centipede[2])は約100種を含め、ムカデ類においては既知最古の化石記録をもち[3]、ナガズイシムカデ目に次ぐ小さなグループである[2]。本群は多足類の中でも真の複眼をもつ唯一の現存群であり[8]、鞭のような細長い脚と短い胴部をもち、姿は他のムカデとは大きく異なる。頭部はやや分厚く、触角は長い鞭状で数百個の環形節に細分される[2]。15対の脚をもつ体節は8枚の背板に覆われ、最後の1枚を除いてそれぞれの後端中心に1個の気門を有する。徘徊性で、投げ縄のような機能をもつ長い脚で獲物を捕える[19]。洞窟で縄張りをつくり、集団生活をすることが知られる[2]。ゲジ類はヘモシアニンを用いて酸素分子を運ぶ唯一のムカデ類である[2]。子育てする習性はないとされる[2]。幼生は増節変態をし、4対の脚のみをもって生まれる[2]



  • Psellioididae

  • Scutigerinidae


  • ゲジ科 Scutigeridae:ゲジ(日本全国)、オオゲジ(関東以南:気門周辺に橙色の紋)、Scutigera coleoptrata(地中海盆地に原産、分布域は世界中に向けて拡大、ゲジ類において研究が最も進んでいる種[2]



イシムカデ目 Lithobiomorpha





Lithobius forficatus(イシムカデ目・イシムカデ科)



イシムカデ類(イシムカデ目 Lithobiomorpha、英名:stone centipede[39])は約1100種を含め、体長は多くが3㎝以内のやや小型のグループである[2]。他の側気門類に比べて胴部はやや短い。頭部は平たい円盤状で、触角は15-100節以上からなる。眼はイシムカデ科では多数の単眼が集約し、トゲイシムカデ科では1対のみをもつ[2]。無眼の種もいくつかある[10]。15対の脚をもつ体節は同じ枚数の背板に覆われるが、第2、4、6、9、11、13枚が幅狭い。雌は鋏型の生殖肢をもつ。徘徊性で、後端数対の脚から防衛用の粘液を分泌することが知られる[19][20]。子育てする習性はないとされる[2]。幼生は増節変態をし、通常7対の脚のみをもって生まれ、6対ないし8対の例もある[2]




  • イッスンムカデ科 Ethopolidae:イッスンムカデ(地表棲、普通種)


  • トゲイシムカデ科 Henicopidae:メクライシムカデ(洞穴)、ゲジムカデ(地表棲、普通種)、トゲイシムカデ


  • イシムカデ科 Lithobiidae:イシムカデ(汎存種)、ヒトフシムカデ(日本国内に優占)



ナガズイシムカデ目 Craterostigmomorpha





ナガズムカデの前端(A)、顎肢(D)、第1小顎(B)、第2小顎(C)、および後端(E)



ナガズムカデ類(ナガズイシムカデ目 Craterostigmomorpha)は2種のみによって知られ、オセアニア大陸のタスマニア州とニュージーランドのみに分布するグループである[29][2]。頭部はやや縦長く、1対の単眼をもち[29][10]、顎肢は頭部の前方まで伸びる[2]。15対の脚をもつ体節は21枚の背板に覆われ[2]、これは元々15枚であった背板のうち第3・5・7・8・10・12枚目がそれぞれ前後2枚に細分された結果である[40][14]:58。曳航肢をもつ体節の外骨格は円筒状に癒合し[2]、後端には「anogenital capsule」という対になった構造体をもつ[7][14]:63。雌は卵と幼生を育つ[2]。幼生は増節変態をし、12対の脚のみをもって生まれる[2]



  • ナガズムカデ科 Craterostigmidae:ナガズムカデ(オセアニア産)


オオムカデ目 Scolopendromorpha





トビズムカデ Scolopendra subspinipes mutilans(オオムカデ目・オオムカデ科)



オオムカデ類(オオムカデ目 Scolopendromorpha、英名:tropical centipede[41]、bark centipede[42])は800種以上を含め[2]、ムカデとして最も一般に知られるグループである。その多くは大型で、最大のものは体長30㎝に達する[2]。頭部は平たい円盤状で、基本としては4対の単眼をもつが、1対や無眼の種類もある[10]。脚はアカムカデ科では23対、他の群では21対をもつ[2]。ただしScolopendropsis duplicata では例外的に39ないし43対の脚をもつ[15][16]。背板の枚数は脚をもつ体節に対応するが、1枚目の背板は直前の顎肢を有する体節まで覆う(他のムカデ類は顎肢の体節に独立した背板をもつ)。イシムカデ類ほどでないものの背板の大きさは断続的に差があり、7枚目以前の偶数番目と8枚目以降の奇数番目の背板がやや狭くなる。強い神経毒と獲物への高い攻撃性を有し、特に大型のものは小型脊椎動物も捕食できる[27]。高い自衛性をもち、人間への咬害はほとんどがこの類に因んでいる[13]。雄は多層の外皮に覆われるビーンズ型の精包を産み[2]、雌は卵と幼生を育つ[2]。孵化直後の幼生は成体と同様の脚数をもつ[2]




  • アカムカデ科 Scolopocryptopidae:脚23対、アカムカデ属(日本国内で唯一脚23対のセスジアカムカデなど、北海道南部を含む全国、北米:普通種を含む)


  • メナシムカデ科 Cryptopidae:脚21対、メナシムカデ属(曳航肢は分厚く、西南諸島〜黒潮圏、北米産の種が "イシムカデ" を称して市販されたことがある)


  • オオムカデ科 Scolopendridae:脚21対、オオムカデ属(北海道南部以南の全国に棲息する日本最大種・トビズムカデ、世界最大種・ペルビアンジャイアントオオムカデなど)、アオムカデ(西南諸島〜九州沿岸部)



ジムカデ目 Geophilomorpha





Geophilus sp.(ジムカデ目・ジムカデ科)



ジムカデ類(ジムカデ目 Geophilomorpha、英名:soil centipede[23])は約1300種を含め、ムカデ類における種数の最も多いグループである[2]。その多くが小型で、細長い胴部と比較的に短い脚をもつ。縦長い頭部は眼を欠き、触角は14節からなる[2]。脚の数はムカデの中でも最多で多様化しており、ナガズジムカデ科は41-101対、他の群(Adesmata)では27-191対からなる。特に後者は同種においても数は多様で、性的二形も示し、往々にして雌の方が多い[2]。脚のある全ての体節はほぼ同規的で、それぞれの背板の境目にもう1枚の幅狭い背板が占め込んで、最後のを除いて全ての体節に気門を有する[2]。地中に棲む土壌生物であり、自分より小型のミミズなど他の土壌生物を捕食すると考えられる[23]。雌は卵と幼生を育つ[2]。孵化直後の幼生は成体と同様の脚数をもつ[2]




  • マドジムカデ科 Chilenophilidae:フタマドジムカデ、ミドリジムカデ(日本国内の土中に優占)


  • ベニジムカデ科 Dignathodontidae:ベニジムカデ(日本全国に分布、朽木に多い)


  • ジムカデ科 Geophilidae[43]:スミジムカデ、ホソツチジムカデ、ヨコジムカデ(深層からも産する大型種を含む)、ツチムカデ、シマジムカデ(西南諸島)


  • オビジムカデ科 Himantariidae:ヨシヤジムカデ(歩脚対数多)


  • ナガズジムカデ科 Mecistocephalidae:ツメジムカデ(多産)、ナガズジムカデ(=メキストケファルス:中〜大型種)、ニブズジムカデ、タカシマジムカデ、タイワンジムカデ、モイワジムカデ(西南諸島・北海道)、ヒロズジムカデ(中〜大型種)、アゴナガジムカデ(顎肢が前方に伸びる:台湾・西表)


  • オリジムカデ科 Oryidae:ヒラタヒゲジムカデ


  • マツジムカデ科 Schendylidae:サキブトジムカデ、エスカリジムカデ、チチブジムカデ、モモジムカデ



人間の生活との関わり









アパートの壁に付いたゲジ類


人間の生活と文化に関わるムカデ類は、オオムカデ類が特に代表的で、世間一般におけるムカデへのイメージとなっている。有毒や凶暴な習性で畏敬され、世界中でもいくつかの神話や伝説のテーマとなる[11]


一部の種は室内環境に侵入することがある。この場合、有毒生物として広く知られるオオムカデ類のように、高い自衛性で刺激される度に嚙み付くことがあり、またはゲジ類のように単に素早い動きと異様な姿で害虫扱いされるものがある[5]。なおゲジ類に関しては、衛生的に無害かつ室内の衛生害虫を狩ることで益虫ともされる[5]



咬傷


咬傷はほとんどがオオムカデ類で、それ以外のムカデ類によるのは稀である[13]


大型のオオムカデ類に噛まれるとかなり痛むが、人命に係る被害や続発症はほとんど無い[13][44]。しかし子供やアナフィラキシーショックを発症する体質にある方への危険性が高く[44]、噛まれた場合には速やかに医師の診察を受けることが望ましい。主に夏場、山林に近い民家では、ゴキブリなどを捕食するためにムカデがしばしば家屋の内部に侵入する。この場合、靴の中や寝具に潜んだりすることから咬害が多く、衛生害虫としても注意が必要である。噛まれた場合、患部に異物が残っていればこれを除去して毒を絞り出し、患部を水道水で洗浄する。抗ヒスタミン剤を塗布する[45][46]。ゲジ類は家屋に侵入してくることもあるが、毒は弱く積極的に人を噛むこともなく、無害とされる[47]。また、小型のムカデは基本としてヒトの皮膚を貫通できない[44]


近年の日本では、不快害虫の忌避効果を目的とした薬剤にムカデ・ヤスデの侵入防止効果を謳う場合が多い。家庭用殺虫剤等ではすぐには死なない(近年はムカデ用の殺虫剤が市販され、冷却により動きを止め、効果の解り易さを演出している)。俗に「ムカデはつがいで行動しているために、1匹を殺すともう1匹必ず現れる」と言われているが、ムカデにつがいで行動するような習性は無く(配偶時のみ短時間つがいで行動する)、1匹現れるような環境には自然とその他の個体も出現しやすいというだけのことである。



産業





王府井で販売されるオオムカデ


産業との関連は少ない。オオムカデ類は地域によって食用とされ、また油漬けや乾物は火傷や切り傷に効果があるとされ、民間薬として知られており一部に市販の例もある。観賞魚などの餌として冷凍のオオムカデが輸入されて市販されている。漢方では生薬名を蜈蚣(ごしょう)といい、平肝・止痙・解毒消腫の効果があるとされる。オーストラリア原住民においては伝統的な調味料の原料に使用される[48]



飼育


ペットとしての飼育対象は主にオオムカデ類で、輸入種を中心に拡大傾向にある。さまざまな種類が入荷しており、大型種ほど高値で販売される傾向がある。



モチーフ、象徴


「非常に凶暴で攻撃性が高い」というイメージや、「絶対に後ろに下がらない(後退しない)」という俗信や、多くの卵を産み、温めて子育てをする性質を「子孫繁栄」と解くなど、戦国時代にはムカデにあやかり、甲冑や刀装具等にムカデのデザインを取り入れたり、旗差物にムカデの絵を染め抜いた物を用いた例もある。また赤城山などの神体として、また『毘沙門天』の使いとされ、神格化されている。商家においても、ムカデの多くの足から「客足が多い」、強い攻撃性から「他店に負けない」という意味で縁起物として扱われることがあった。
このような理由によりムカデは古くから家紋や店紋にデザインされることも多く、そのバリエーションも多い。


男体山の大蛇と日光の戦場ヶ原で決闘した伝説、藤原秀郷(俵藤太)の百足退治伝説などが知られる。


『甲陽軍鑑』に拠れば武田家の金掘り衆は、トンネル戦法を得意とする工兵部隊で、百足衆と呼ばれたとも言われる。大蛇が河川を象徴し、砂鉄の採集や製鉄の技術者集団を表すことと比して、ムカデは地下坑道を掘り進み、自然金などの鉱石を採集する技術者集団を表しているという説がある[49]。相馬中村藩に起源する相馬野馬追においては、「下がりムカデ」の旗が軍師の指物と指定されている。足の多いことにより、伝令をムカデに例えることも一般的であった。


昆虫やクモ、サソリなどと同様、アクセサリーやグラフィックのモチーフになることや、子供向けの絵本のキャラクターとしてムカデが登場することもある(ムスティなど)。



ムカデの名が付いた生物





ジムカデ


ムカデでないものの、呼称は「ムカデ」と名付けられた生物はいくつかある。


同じく多足類の仲間としてコムカデ(コムカデ綱)という分類群があるが、ムカデ(ムカデ綱)ではない。ムカデエビという海底洞窟に生息する甲殻類があり、多足類に連想させる体制をもち、口器が毒腺をもつ[50]。ウミウシの仲間にムカデミノウミウシやムカデメリベという種類があり、これはムカデの脚のように胴体が櫛状になっていることから、その名が付いた。また、水生昆虫のヘビトンボの幼虫は、ムカデのように長い胴体と、その胴体の両側に櫛状に呼吸用エラがムカデの脚のように並び、性質が荒くて噛みつくことから、水ムカデ(Water Centipede)と呼ばれる事がある。噛まれると痛いが、ムカデのような毒は持たない。深海産のゴカイの仲間にも、ムカデに似た姿のオヨギゴカイなどがある。ツツジ科の植物にジムカデ目と同じ和名をもつジムカデ(地百足)があり、葉と茎の形状がムカデに似ていることから名が付いた。ラン科の着生植物にムカデランがある。これも、樹上・岩上を這う茎の両側に短い棒状の葉が互生する姿がムカデの姿に似ていることから名づけられた。



脚注




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関連項目



  • 多足類

  • ムカデエビ

  • ムカデ競走

  • ヒノキチオール













外部リンク



  • ムカデ(咬傷) (PDF, 141KB) 公益財団法人 日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報



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