非常事態宣言
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非常事態宣言(ひじょうじたいせんげん)は、災害などによる国家などの運営の危機に対して、緊急事態のために政府が特別法を発動することである。
戒厳令と似ているが、戒厳令では国の立法、司法、行政という統治権の一部または全部を軍に移管する[1]。
目次
1 概説
2 発動例
3 脚注
4 関連項目
概説
対象には武力攻撃、内乱、暴動、テロ、大規模な災害などのほか、鳥インフルエンザやAIDSなど疫病もある。措置には警察・軍隊など公務員の動員、公共財の徴発、法律に優位する政令の発布、令状によらない逮捕・家宅捜索などを許すことの他、報道や集会の自由など自由権の制限である。
日本では第二次世界大戦後の占領期の1948年4月に起こった阪神教育事件に際し、GHQが発令した例がある。また1954年までは、旧警察法に基づいて、国家非常事態宣言を出す権限が内閣総理大臣に与えられていた。しかし、2019年現在、根拠法令はない。また地方自治体が「交通死亡事故多発非常事態宣言」や「ごみ非常事態宣言」などを宣言することがあるが、これらは特別法を発動するものではない。2010年5月18日、口蹄疫の流行に対し、東国原英夫宮崎県知事が「非常事態宣言」をした。
なお、現在の日本では、非常事態宣言に類似する制度として、災害対策基本法に基づく災害緊急事態の布告と、警察法に基づく緊急事態の布告とがあり、いずれも内閣総理大臣が発する。
アメリカでは州知事・首長に災害にともなう地域内非常事態を宣言する職権がある。アメリカ大統領が非常事態を宣言すること自体は珍しいことではなく、外国からの脅威があるとして大統領の権限で資産凍結を行う際に宣言される(例えば、2018年11月には、反政府デモを武力で弾圧した中米ニカラグアの混乱をアメリカの安全保障上の脅威と見なし、治安や民主主義を損なう人物の資産を凍結するために宣言された)他、テロや感染症に対応するためにも宣言される[2]。アメリカ合衆国では、1979年の対イランの資産凍結を含め、約30件の宣言が2019年2月現在で有効とアメリカのメディアで報じられている[2]。
フランスでは、2015年のパリ同時多発テロ事件で発令され、2017年10月31日まで延長された
[3][4]。
発動例
1941年12月8日 - 太平洋戦争開戦(大日本帝国)
1948年4月24日 - 阪神教育事件(日本)
1991年8月19日 - 8月21日 - ソ連共産党保守派によるクーデターで非常事態委員会が発令するも、クーデターは失敗(ソビエト連邦)
1992年4月30日 - ロス暴動(アメリカ)
1996年9月26日 - KB橋の崩壊(パラオ共和国)
2001年9月11日 - アメリカ同時多発テロ事件(アメリカ)
2001年12月19日 - アルゼンチン暴動でデ・ラ・ルア大統領が発令(アルゼンチン)
2001年11月26日 - ネパール王族殺害事件後の内乱(ネパール王国)
2004年12月26日 - スマトラ島沖地震(スリランカ、モルディブ)
2005年11月8日 - 2005年パリ郊外暴動事件(フランス)
2005年7月7日 - ロンドン同時爆破事件(イギリス)
2005年8月28日 - ハリケーン・カトリーナ(アメリカ・ルイジアナ州)
2006年2月24日のフィリピンでの国軍によるクーデターの企て - アロヨ大統領が発令- 2006年のタイ軍事クーデター - タクシン首相が発令するが、軍部は無効として戒厳令を発布
2007年のアメリカバージニア州バージニア工科大学銃乱射事件 - 訪日中のバージニア州知事が東京で発令- 2007年のギリシャ山林火災
- 2007年のグルジアでの野党デモ
2009年のアメリカ合衆国での新型インフルエンザ(H1N1亜型)感染拡大 - オバマ大統領が発令
2010年のスペインでの航空管制官ストライキ
2011年のニュージーランドでのカンタベリー地震の発生によりキー首相が宣言- 2011年の福島第一原子力発電所事故 - 原子力災害対策特別措置法による原子力緊急事態宣言が発令された
- 2011年のグアテマラにおける隣国(メキシコ)からの麻薬カルテル組織の侵入
2013年のエジプト・サッカー暴動の裁判結果に対する暴動 - 大統領が発令- 2013年のチェリャビンスク州の隕石落下
2014年のタイ軍事クーデター - タイ王国軍が発令- 2014年の西アフリカエボラ出血熱の流行 - シエラレオネ、リベリア、ナイジェリア、ギニアが発令[5][6][7][8]
2015年10月23日 - 米カリフォルニア州ロサンゼルス郊外のアライソ渓谷ガス漏れ事故への対応
2015年11月のパリ同時多発テロ事件 - フランス[9]
2016年7月14日 - 2016年ニーストラックテロ事件
2016年9月21日 - 米ノースカロライナ州シャーロットでおきた警察による黒人男性射殺事件を受けての抗議活動及び暴動
2017年5月 - イエメンの武装組織フーシが、コレラの流行が深刻化したことを踏まえて宣言[10]。- 2017年8月12日 - 2017年のユナイト・ザ・ライト・ラリー
- 2017年12月1日 - ホンジュラス大統領選挙の結果を巡り、同国全土で発生したデモへの対応[11]。
2018年1月18日 - ジャマイカ第二の都市、モンテゴ・ベイ市において多発する殺人事件への対応[12]
2019年2月9日 - ロシア、ノヴァヤゼムリャ諸島ベルーシャ・グバにおいて、ホッキョクグマの出没回数増加を受けての対応[13]。
2019年2月16日 - アメリカ、ドナルド・トランプ大統領が、メキシコとアメリカの壁建設を目指し発令。[14]
脚注
^ “ コトバ解説 「非常事態宣言」と「戒厳令」の違い ”. 毎日新聞. (2015年12月8日). https://mainichi.jp/articles/20151203/mul/00m/030/00700sc 2017年7月6日閲覧。
- ^ ab“非常事態宣言とは トランプ大統領、これまで3件”. 日本経済新聞. 2019年2月18日閲覧。
^ “非常事態が日常になるということ” (2016年11月29日). 2017年4月23日閲覧。
^ 仏「非常事態宣言」解除、パリ同時多発テロから2年ぶり - 2017年10月31日
^ Rod Mac Johnson (2014年8月1日). “シエラレオネ、エボラ拡大で非常事態宣言”. AFP. AFPBB News. オリジナルの2014年8月10日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/zOZcP 2014年10月11日閲覧。
^ “エボラ出血熱、リベリアが非常事態宣言”. AFP. AFPBB News. (2014年8月7日). オリジナルの2014年8月7日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/foXQW 2014年10月11日閲覧。
^ “ナイジェリアも非常事態宣言 エボラ出血熱流行で3カ国目”. 共同通信. 47NEWS. (2014年8月9日). オリジナルの2014年10月10日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20141010214834/http://www.47news.jp/CN/201408/CN2014080901001053.html 2014年10月11日閲覧。
^ “ギニア、エボラ熱拡大で非常事態宣言”. AFP. AFPBB News. (2014年8月14日). オリジナルの2014年8月14日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/rhG9a 2014年10月11日閲覧。
^ “パリ同時多発テロ:自爆テロや銃乱射120人死亡”. 毎日新聞 (2015年11月14日). 2015年11月14日閲覧。
^ イエメン、コレラの拡大止まらず、1カ月で600人死亡 朝日新聞デジタル(2017年6月3日)2017年6月4日閲覧
^ 中米ホンジュラスで非常事態宣言、大統領選後の暴力デモで AFP(2017年12月3日)2017年12月23日閲覧
^ ジャマイカ第2の都市に非常事態宣言、殺人多発で 旅行者にも注意喚起 AFP(2018年1月21日)2018年1月21日閲覧
^ “どう猛なホッキョクグマが多数うろうろ…ロシアの島で非常事態宣言”. AFP (2019年2月10日). 2019年2月10日閲覧。
^ 日本放送協会. “米トランプ政権 “国境の壁”建設に向け非常事態宣言へ”. NHKニュース. 2019年2月16日閲覧。
関連項目
- 国家緊急権
- 夜間外出禁止令
- 戒厳(令)
- 有事法制
- 激甚災害
- 緊急事態
- 緊急事態基本法
- 有事